いつも、雨
東京駅まで、車でねえやと一緒に送ってくれたのに……、一旦帰宅してるはずなのに、まさかもう来てくれるなんて!


「早すぎない!?」

「比喩通り、飛んで来たから。」


笑顔でそう言って、要人は両手を広げた。

吸い込まれるように、領子は要人の胸に飛び込んだ。


「……うれしい。」

ぎゅっと抱きしめてもらって……領子は幸せにうち震えた。


殺伐としていた要人も、領子の笑顔と温もりに、心が凪ぐのを感じた。



……ずっとこうしていたい……。

何年たっても変わらない。

ただ、こうして……全身で感じていたい。

お互いの存在が、確かなものだと……。





「お庭、また、荒れちゃったわね。」

縁側に座って、領子が淋しそうにつぶやいた。


「あー、うん。やっぱり剪定しいひんとな。……それに、隣。ボヤ出したのに、解体もせんとそのまんまやから……イタチとか住んでるんちゃうかな。庭に獣道ができてるわ。」

「イタチ?……この家にも入って来る?……夜……天井裏を走り回ったりしない?」

「どやろ。いや、でも、恭風さま、家と舞台だけはめっちゃ綺麗にしてはるから。大丈夫ちゃう?」



東京の天花寺家も古いので、ネズミが住み着いているらしく、夜中に音がすることもある。

領子はその都度、大騒ぎをして、ねえやと一緒に寝てもらう。


今夜は、恭風さまのお部屋を訪ねるのだろうか。

それとも、枕を抱えて震えて眠るのだろうか。


想像すると……かわいすぎて、たまらない気分になる。


俺がそばにいてあげられたらいいのだけれど……恭風さまの手前、そうもいかない。


予定通り、夜は東京の天花寺家に戻るつもりだ。

お金も時間も無駄なようだが、領子との仲を露ほども疑われないためには、努力を惜しんでられない。



「ほな、行こうか。……今日は、恭風さまにお逢いすると……ちょっとまずいし。」

要人にそう言われて、領子は不思議そうに首を傾げた。

「今日は、なの?」

「……3日は、公式訪問予定?……さっきキタさんに頼まれたわ。せっかくの晴れ舞台やし、観てあげて、って。」

「まあ。ねえやが……。お父さまもお母さまも、あまりお得意でないから……。仕方ありませんね。」

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