いつも、雨
「わかった。でも、領子さま。当分、隠してなよ。ひさしぶりに帰郷することになってる俺からの京都土産、ということにしようか 。ああ、それから、お守りは売り買いする、とは言わないよ。授与してもらうものだから。」

要人に教えられ、領子は、目をパチクリして、それから、うなずいた。



キリシマツツジの道を進み、本殿にお詣りした後、授与所に立ち寄った。

受験用の合格祈願のお守りが目に付くが、領子は受験の予定がない。


「これかな。勧学のお守り。この調子で、領子さまの成績がいい感じに上がりますように。」

要人はそう言って、普通の錦のお守りを指差した。

が、領子は、別のお守りをじっと見ていた。

「領子さま。……授与していただくのは、学業のお守りですよ。」

「……わかってます。」

領子はそう言ったけれど、いつまでも名残惜しそうに見つめていた……縁結びのお守りを。


……さすがに、これは……ダメよね……。

結局、あれこれ悩んだ領子が選んだのは、小さな円柱の木を鳥の形にしつらえ彩色した、キーホルダーのお守りだった。


「ウグイス(鶯)じゃないのね。ウソドリ(鷽)ですって。去年の凶を吉に変えてくれるそうよ。……竹原も、どう?」

「お揃いは、まずいかな。俺は、いいわ。領子さまだけ。……すみません、こちら、一体、お願いします。」

あくまで一緒にお揃いのモノを持ちたかった領子は、少しむくれたけれど、授与されたウソドリのお守りを要人から手渡されると、うれしそうにほほ笑んだ。

「ありがとう。……お土産?」

「そうやな。領子さまが今年も幸せな1年を過ごせますように。」

「……竹原とこうして過ごせたら……幸せ。」


どこまでも本気でそう言う領子が、かわいくてかわいくて……。

……中身を変えれば……お揃いに見えなければ、縁結びのお守りを一緒に持つこともできなくもない……か。

つくづく、領子に甘い要人だった。





夕食は、池にせり出した料亭で、タケノコ尽くしに舌鼓を打った。

京都の西南部……乙訓とよばれる地域では、京都式軟化栽培法と言われる特殊な方法でタケノコを栽培する。

手間暇はかかるが、他に類を見ない甘い美味しいタケノコが収穫できる。
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