いつも、雨
今は亡き大奥さまが、この乙訓のタケノコが大好きで……、領子はもちろん、要人もよくご相伴に預かったものだ。

残念ながら、東京で食べるタケノコとは別物だ。


タケノコのお造りも、若竹煮も……とても美味しくて……祖母のことを思い出して、領子は涙ぐんだ。


「……今日はツツジも見せたかったからココに来たけど、もっと美味しい店もあるし。……また、一緒に行こう。」

「うん。ありがとう。楽しみにしてるわ。」

領子の笑顔に要人の頬も緩んだ。



暗くなる前に領子をお屋敷に送ってから、要人は東京に戻った。





翌日、要人は天花寺夫人に相談を持ちかけた。

「久しぶりの京都ですので、恭風さまの舞台を拝見してから、お世話になっていた叔母と、……大奥さまのお友達の藤巻夫人をお訪ねしてご挨拶してこようと思っているのですが、手土産に何をお持ちすれば喜んでいただけるでしょうか。」

夫人は、珍しく要人に頼られて、悪い気はしなかったようだ。

「あら、よろしいじゃありませんか。手土産なんて、なんでも。……お土産なんかより、あなたがこんなに立派になられたのをご覧になれば、叔母さまもお喜びになられますよ。」

手放しに褒められて、要人は恐縮して見せた。

夫人はますます相好を崩した。

「そうね……和菓子はおよしになったほうがよろしいと思いますわ。京都の人はプライドが高いから。関西に進出していないブランドのチョコレートはいかが?」

「わかりました。ありがとうございます。」

夫人のアドバイスに、要人は笑顔でお礼を言った。



……どうでもいい、つまらない相談を持ちかけることで、夫人に印象付けることができただろう。

領子は2年以上、毎月京都に行っているが、要人は5年ぶりの京都だ……と。


まさか、京都で、毎月のようにデートを重ねてるとは、露ほども疑わせてはいけない。

昨日も、今日も、明日も……日参することも。




結局、ゴールデンウィークのほとんどを、要人もまた京都で過ごした。


領子とはわずかな時間しか逢えなかったけれど、タクシーの運転手から聞き出した鴨五郎の家を探した。

当たりをつけた通りを歩くと、予想以上に大きな家を、すぐに見つけることができた。


まるで要塞のように用心深い石造りの家は……異様に見えた。

窓は申し訳程度の小さな窓しかない。

セコムだけじゃない、監視カメラも動いている。


……まるで、ヤクザの自宅だな……。

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