いつも、雨
いそいそと舞扇の箱を要人に渡す恭風を、領子は冷ややかに見ていた。
……やっぱりお兄さまにとって、竹原は特別なのね。
なんだか……おもしろくないわ……。
まさか実の兄に嫉妬するとは思わなかった。
憮然としてる領子に気づいて、要人は、内心、うれしかった。
要人は、モテる。
学内でも、街中でも、見知らぬ女性に懸想されることが多い。
かつては適当に遊んで来たけれど、領子にお願いされてからは、ひたすら避けてきた。
すっかり女ッ気なし……と言うと語弊があるが……まあ、領子とのほぼプラトニックな恋愛だけに甘んじている。
領子はヤキモチを妬く必要もなくなり、要人を安心して独占していた。
もちろんそれはそれでイイ。
でも……やはり、好きな女が、自分に対する独占欲を隠しきれず、嫉妬に悶える姿というのは……小気味いいものだ。
要人の中のイケズなスイッチが入る。
これみよがしに、恭風と笑顔で親しげに話し、お祝いと称して、明日の夜の会席を約束した。
「……わたくしも、ご一緒してもよろしいかしら。」
引きつる頬にヤキモチを隠しきれないまま、領子は要人と恭風にそう尋ねた。
「へえ?領子は、お茶のお稽古ちゃうん?」
「夜には戻ります!……竹原。わたくしも、ご相伴にあずかれますか?」
ツンと顎を出してそう尋ねた領子の強がりが、要人にはたまらなく愛らしかった。
恭風の舞台が終わった後、要人は早々に辞去した。
領子は、兄の後片付けと、お世話になったがたがたへのご挨拶につきあって、暗くなる頃にようやく解放された。
「では、お兄さま。おやすみなさいませ。」
「ちゃんと戸締まりしぃや。……せやけど、心配やな。……竹原に、泊まってもろたらよかったかな。」
兄の何の気なしの言葉に、領子はギクリとした。
でも、すぐに笑顔を取り繕った。
「竹原は久しぶりの帰郷なのでしょう?あまり拘束するとかわいそうですわ。……それに……外聞が悪いですわ。」
恭風は驚いたように、妹を見た。
まるで母親の天花寺夫人のような口ぶりだ。
あんなにも竹原に懐いてたのに……いつの間に……。
そうか……。
領子も、もう15歳か。
来年には、結婚できる年齢やもんな。
いつまでも、竹原竹原ゆーてへんか。
……いつまでも……思い切れへんのは、わしだけやなあ。
恭風は自嘲的に笑った。
……やっぱりお兄さまにとって、竹原は特別なのね。
なんだか……おもしろくないわ……。
まさか実の兄に嫉妬するとは思わなかった。
憮然としてる領子に気づいて、要人は、内心、うれしかった。
要人は、モテる。
学内でも、街中でも、見知らぬ女性に懸想されることが多い。
かつては適当に遊んで来たけれど、領子にお願いされてからは、ひたすら避けてきた。
すっかり女ッ気なし……と言うと語弊があるが……まあ、領子とのほぼプラトニックな恋愛だけに甘んじている。
領子はヤキモチを妬く必要もなくなり、要人を安心して独占していた。
もちろんそれはそれでイイ。
でも……やはり、好きな女が、自分に対する独占欲を隠しきれず、嫉妬に悶える姿というのは……小気味いいものだ。
要人の中のイケズなスイッチが入る。
これみよがしに、恭風と笑顔で親しげに話し、お祝いと称して、明日の夜の会席を約束した。
「……わたくしも、ご一緒してもよろしいかしら。」
引きつる頬にヤキモチを隠しきれないまま、領子は要人と恭風にそう尋ねた。
「へえ?領子は、お茶のお稽古ちゃうん?」
「夜には戻ります!……竹原。わたくしも、ご相伴にあずかれますか?」
ツンと顎を出してそう尋ねた領子の強がりが、要人にはたまらなく愛らしかった。
恭風の舞台が終わった後、要人は早々に辞去した。
領子は、兄の後片付けと、お世話になったがたがたへのご挨拶につきあって、暗くなる頃にようやく解放された。
「では、お兄さま。おやすみなさいませ。」
「ちゃんと戸締まりしぃや。……せやけど、心配やな。……竹原に、泊まってもろたらよかったかな。」
兄の何の気なしの言葉に、領子はギクリとした。
でも、すぐに笑顔を取り繕った。
「竹原は久しぶりの帰郷なのでしょう?あまり拘束するとかわいそうですわ。……それに……外聞が悪いですわ。」
恭風は驚いたように、妹を見た。
まるで母親の天花寺夫人のような口ぶりだ。
あんなにも竹原に懐いてたのに……いつの間に……。
そうか……。
領子も、もう15歳か。
来年には、結婚できる年齢やもんな。
いつまでも、竹原竹原ゆーてへんか。
……いつまでも……思い切れへんのは、わしだけやなあ。
恭風は自嘲的に笑った。