いつも、雨
……なるほど。

竹原の言う通りだわ。


鼻につく態度を通したほうが、変に勘ぐられることもない。

抵抗感はあるけれど、これも、2人の関係を守るため。


領子はあごをぐっと上げて、気位の高いお嬢さまの仮面を付けたまま京都のお屋敷に戻った。




要人は、荒れ果てた庭園を剪定しながら、領子を待っていた。

「何してるの?……『お土産』?」

無邪気なおねだりに、要人はほほ笑んだ。

「いや。花は刈ってない。……どこから入り込んだんか知らんけど、前はなかった外来種が増えてしもてるわ。ヒルガオ、枯れてた。」

「え……。そんな……。」

悲しい顔をした領子のもとに行き、そっと抱きしめた。

「このままじゃかわいそうやな。桜も元気ない気がする。……明日、恭風さまにお願いして、造園会社を入れさせてもらおうか。」


費用は、要人が持つ。

そう言えば、恭風はむしろ喜ぶだろう。


ホッとしたらしい領子の額にキスして、肩を抱いた。

「ほな、行きましょうか……領子さま。」

……低い声に、ドキッとした。

いよいよ……キャッ!


「はい。」

領子は、気恥ずかしくなって、うつむいて、しおらしく返事した。



必要最低限の着替えだけを詰めた小さなバッグを持って、要人の隣を歩く。

いつものデートとそう変わらない……ただ歩いているだけなのに……鼓動が激しすぎて、呼吸が変になってくる。



……過呼吸?

大丈夫か?

要人は、領子の様子に気づいて、苦笑した。


「……無理強いするつもりはないから。今夜は、美味しいものを食べて、ゆっくり過ごすだけにしときましょう。」

「え!?嫌!」

領子は慌てて要人の腕にしがみついた。


「領子さま。お行儀悪いですよ。……この辺りは見知ったかたも多いですから、自重してください。」

「あ。ごめんなさい。」

しゅんとして、領子は要人から離れた。


「せめて車に乗るまで……我慢。」

小声でそうささやいて、要人はタクシーを止めた。



行き先は、「貴船」と要人が運転手に伝えた。
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