いつも、雨
貸切!?

それって、竹原と2人で一緒にお風呂に入るってこと!?


領子の頬がおもしろいほどに赤く染まった。


要人は、笑いをこらえて、仲居さんにお願いした。

「そうですね。では、遅い時間を取っておいてください。お願いします。」

いつ準備したのか、要人がさりげなく、お茶を入れ終えた仲居さんにぽち袋を渡した。




「……貸切って……」

仲居さんが出ていくのを待って、領子はつぶやいた。


「ん?ああ。せっかくやから。寝る前に、領子さま、独りで入ってきたら?」

要人は、性的ないやらしさを見せず、あっさりそう言って、準備されていた浴衣やタオルを手に取った。

「独り……」

不満そうな領子に、要人は浴衣やお風呂セットを渡した。

「それはそれとして、汗流してくるわ。領子さまも、どうぞ。」

「あ……はい。……うん。」

領子は、ものすごく不自然にギクシャクと歩いて、お風呂へと向かった。



……ああまで緊張されると、気が引けるもんやなあ。

これまでにも、自分から誘ってきたくせに、その場におよぶとゴニャゴニャ言い出すめんどくさい女は、いた。

なだめすかしてまで抱く気にもなれず、あっさり背を向けてきた。


でも、領子の場合は……ただただ、愛しくて、かわいくて……怖い想いも、つらい想いもさせたくないから……


「……無理せんでええのに……意地っ張りっちゅうか……」

岩風呂にしつらえた、古いけれど清潔な湯船につかって、要人は独りごちた。


ちょうど食事時のせいか、他の宿泊客はいない。

意図せず貸切風呂のようだ。


……領子さまも、独り風呂かな?

大丈夫かな。

ひたすらお湯につかって、のぼせてしまわへんやろか……。




要人の心配は、的中した。

領子は、来たるべき時を想像して、悶々とし……気づいた時には、グッタリしていた。

たまたま別の客が入って来たタイミングで、湯船から出ようとして……上手く立てなかった。


「え!?大丈夫ですか?大変!」

標準語のイントネーション……。

関東からのお客さまなのね……。


どうでもいいことを考えながら、領子は湯船のふちに両腕を掛けてお湯に沈まないようにしていた。
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