いつも、雨
すぐに仲居さんが2人駆け付けてくれた。

両脇から抱えられてお湯から上がり、脱衣所まで連れて行ってもらった。

椅子に座って、扇風機の風を当てられ、お水を飲むと……何となく落ち着いてきた。


「ありがとうございました。ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。」

ずっとついていてくれた仲居さんは、さきほど要人がぽち袋を渡したヒトだった。


仲居さんが知らせてくれたらしく、廊下で要人が待ってくれていた。

「大丈夫ですか?」

要人は屈んで、領子の顔を覗き込んだ。


……少し赤い……。

青かったり、土気色になってるわけじゃないから、すぐ落ち着きそうだな……。


少しほっとしてほほ笑んだ要人を見て、領子は瞳を潤ませた。

「……ごめんなさい。」


「いや。謝らんでも。……ゆっくりしてたらいいから。歩ける?抱っこしよか?」

しょんぼりしてた領子のテンションが急上昇した。

わかりやすい反応に、要人は返事を待たずに、ひょいと抱き上げた。


……軽いけど……以前よりは、少し重くなったな。

まあ、成長してるよな……。


体育の時間以外、運動らしい運動をしていない領子の身体は、柔らかくて白い。

恭風のようにどこもかしこもふにふにと気持ちいい程には肉が付いていないが、抱き心地はかなりいい。


食事の前に、このまましっぽり……とは、いかないよな。

まずは、領子の体調、それから、心情を待つべきだ。


……長い夜になりそうだ。


シトシト降り続く雨音がやけに耳に響いた。





部屋に戻ると、食事の準備が整っているはずだった……が、木目の美しい座卓には伏せたグラスやお箸だけが並んでいた。

続きの間に、既にお布団が敷かれていた。


「少しお休みください。……お食事は、お嬢さまのご容態が落ち着かれるまで、お待ちして……」

「いえ、大丈夫です。よろしくお願いします。」

領子は、仲居さんの言葉の終わらないうちにそう言った。



「大丈夫?」

要人にそう尋ねられ、領子はほほ笑んだ。

「ええ。お腹がすきすぎて目が回っただけですわ。」

領子の強がりに、要人はキスで応えた。


びっくりしたけれど、既に仲居さんの姿はなかった。

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