君の声が、僕を呼ぶまで
「安心…出来る場所…人…」

先生の机を指でなぞり、頬をつける。


賑やかな声も、穏やかな風の音も、私に優しい世界。

この、保健室という小さな世界で、柔らかく笑う先生の隣で、私も笑えるようになりたい。


…雪人先生。


その名を、心の中で呼ぶ。

不思議と安心する響き。


藁をもすがる想いでここに来た。

そこにいたのは、藁だなんてとんでもない。

柔らかな真綿のような人。


私は、この時、人生で初めて、学校という優しくなかったはずの世界で、寝息を立てた。
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