小倉ひとつ。
「瀧川さん。これ、よろしければ」
言いながら両手を離して、コートのポケットから取り出したホッカイロをふたつ差し出す。
貼らないタイプの、ポケットに入る少し小さい大きさのものを多めに持ってきていた。
「ひとつで大丈夫です……!」
「今と帰りのぶんですよ。かじかんだ手でたい焼きを持ったら熱いですから」
やけどなんてしてほしくない。冷ましたらいいのかもしれないけれど、たい焼きはできたてが美味しいので。
瀧川さんはお抹茶も熱い方がお好きだ。今の瀧川さんの冷えっぷりだと、たい焼きやお茶碗の熱を指先からじんわり受け取ってぬくぬくするのは難しい。
多分、普通の温度で運ばれてきても、猛烈に熱く感じて取り落とすくらいには冷えている。
どうぞどうぞ、と半ば強引に押しつけると、ひとつはその場で開けてもらえた。
「ありがとうございます、すみません」
「いいえ。こちらこそ」
押しつけてすみません、を密かに後ろめたく省略した私のずるい返事に、瀧川さんは「いいえ」と穏やかに笑ってくれた。
言いながら両手を離して、コートのポケットから取り出したホッカイロをふたつ差し出す。
貼らないタイプの、ポケットに入る少し小さい大きさのものを多めに持ってきていた。
「ひとつで大丈夫です……!」
「今と帰りのぶんですよ。かじかんだ手でたい焼きを持ったら熱いですから」
やけどなんてしてほしくない。冷ましたらいいのかもしれないけれど、たい焼きはできたてが美味しいので。
瀧川さんはお抹茶も熱い方がお好きだ。今の瀧川さんの冷えっぷりだと、たい焼きやお茶碗の熱を指先からじんわり受け取ってぬくぬくするのは難しい。
多分、普通の温度で運ばれてきても、猛烈に熱く感じて取り落とすくらいには冷えている。
どうぞどうぞ、と半ば強引に押しつけると、ひとつはその場で開けてもらえた。
「ありがとうございます、すみません」
「いいえ。こちらこそ」
押しつけてすみません、を密かに後ろめたく省略した私のずるい返事に、瀧川さんは「いいえ」と穏やかに笑ってくれた。