小倉ひとつ。
思わずニヤけそうになるのを抑える。


ど、動悸が……心臓がうるさいんですが。イケメンってすごい。笑顔の破壊力の半端なさよ。


朝からきらきらしい眩さにあてられて、なぜか幸せな気分になった。

こう、ほわあっと心が浮いた。ほわあっと。


そこにいるだけで人を幸せにできるって、それもう一種の才能だし貴重な能力だし、というか瀧川さんのイケメンっぷりは本当にすごすぎる。


きっちり四十五度に腰を折り、後ろ姿が角に消えて見えなくなるまで頭を下げておいてから、通行の邪魔にならないように急いで門を閉じた。


中から全開まで扉を押し開くと、そのまま扉ごと歩道に出てしまうのだけれど、ひとりで通るのに丁度いい、ふたりで通るにはなかなかに狭い門扉なので、お見送りするときは先に行って、歩道に出て押さえてお見送りする。


そうしないと瀧川さんを敷石の上に立たせてのお見送りになっちゃって、あんまりよろしくない。

お客さまに門を押さえていただくわけにもいかないしね。


面している歩道は幅が広いぶん人通りが多いのだけれど、この早朝はあまり混雑しないから、ぴったり押さえて門に近寄れば、通行の邪魔になるというほど道を塞ぐことはないんだ。


少し狭いけれど、よくこだわられた美しい庭が見渡せるようにと、私のおなかあたりの高さに低くつくられた門扉を押し開ける朝の時間が、私は好きだ。


このお店で緩やかに流れる時間がとても愛おしい。
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