小倉ひとつ。
この間イヤリングを着けていたのは、小ぶりでお茶碗を傷つけないし、お着物ではないし、と考えてのこと。
大ぶりのイヤリングは揺れたらお茶碗を傷つけそうなので、稲やさんにはしていかない。お稽古のときも同じ。
腕時計やアクセサリーを外すのは、今はもう祖母に注意されなくなるほど当たり前で慣れ親しんだ、お茶をいただくときのマナー。
稲やさんへの、敬意だった。
「可愛らしい時計ですね。よくお似合いで」
「ありがとうございます。お気に入りの時計なんです」
花が特徴的な、日本には実店舗がまだ少ない女性向けブランド。私の住んでいる街には、今年の春先にやっと実店舗が開店した。
時計盤に描かれた淡い花が可愛くて、去年の夏に一目惚れした腕時計だった。
今年のお誕生日に奮発して買った憧れの腕時計は、何か特別なお出かけのとき、晴れた日にしか着けないことにしている。
今日は時計以外に何もつけていない。
イヤリングはあまりつけないから手持ちの数が少ないので、少し前につけたものを何度もつけるのもためらわれた。
アクセサリーは、学校帰りに稲やさんに寄るのも相まって、ほとんど買わないし、バイトがある日は絶対につけないし、そうなると一年のうち何回着けるんだろうというくらいしか使わない。
だから、お祝いとか何か頑張ったご褒美とか、自分でジュエリーショップをはしごして選んで買ったもの以外は持っていないのだ。
……それに、普段はアクセサリーをつけない人がつけてたら、あんまりにも気合が入りすぎているみたいだし。
「瀧川さんも普段は着けていらっしゃらないですよね?」
ホッカイロを渡したときやペンを渡すときのことを思い出してみても、瀧川さんの腕はいつもあいていた気がする。
慎重に思い出してからの問いかけに、瀧川さんは「ああ、いえ」と短く笑った。
大ぶりのイヤリングは揺れたらお茶碗を傷つけそうなので、稲やさんにはしていかない。お稽古のときも同じ。
腕時計やアクセサリーを外すのは、今はもう祖母に注意されなくなるほど当たり前で慣れ親しんだ、お茶をいただくときのマナー。
稲やさんへの、敬意だった。
「可愛らしい時計ですね。よくお似合いで」
「ありがとうございます。お気に入りの時計なんです」
花が特徴的な、日本には実店舗がまだ少ない女性向けブランド。私の住んでいる街には、今年の春先にやっと実店舗が開店した。
時計盤に描かれた淡い花が可愛くて、去年の夏に一目惚れした腕時計だった。
今年のお誕生日に奮発して買った憧れの腕時計は、何か特別なお出かけのとき、晴れた日にしか着けないことにしている。
今日は時計以外に何もつけていない。
イヤリングはあまりつけないから手持ちの数が少ないので、少し前につけたものを何度もつけるのもためらわれた。
アクセサリーは、学校帰りに稲やさんに寄るのも相まって、ほとんど買わないし、バイトがある日は絶対につけないし、そうなると一年のうち何回着けるんだろうというくらいしか使わない。
だから、お祝いとか何か頑張ったご褒美とか、自分でジュエリーショップをはしごして選んで買ったもの以外は持っていないのだ。
……それに、普段はアクセサリーをつけない人がつけてたら、あんまりにも気合が入りすぎているみたいだし。
「瀧川さんも普段は着けていらっしゃらないですよね?」
ホッカイロを渡したときやペンを渡すときのことを思い出してみても、瀧川さんの腕はいつもあいていた気がする。
慎重に思い出してからの問いかけに、瀧川さんは「ああ、いえ」と短く笑った。