小倉ひとつ。
「お会計はご一緒でよろしいでしょうか?」
「はい」
なんとなく、当然お会計は別かなと思っていたのに、さらっと瀧川さんがまとめて支払う流れになっていた。
「えっ」
あの、とお財布を出す。
ゆっくりこちらを振り返って瞬きをした瀧川さんは、開きかけた私の長財布を認めて、いえ、とあくまで穏やかに首を振った。
「あなたのそういうしっかりしていらっしゃるところは、美徳ですし、素敵だと思いますが。今日のお礼も兼ねておりますのでお気になさらず」
「いえ、でも」
今日のお礼だなんて、むしろ私がお邪魔する方なんだから、ご馳走していただくわけにはいかない。
自分でお支払いする気だったから、たい焼きのことを鑑みてそんなにたくさん注文していないとはいえ、遠慮なく好きなものを頼んだつもりだ。
瀧川さんが多く食べたわけでもない。ふたりとも同じものを頼んだのに、瀧川さんにお支払いをお任せするだなんて、あんまりにも申し訳なさすぎる。
……こういうとき、なんて言ったら角が立たないんだろう。
私に恋人はいない。
友人なら最初から割り勘で、きっかり等分するか、お会計を分けるかする。
誰かとそういう甘い……のかよく分からないけれど、とにかくこういうお会計をしたことはない。
経験がなさすぎて、よく分からなかった。
「はい」
なんとなく、当然お会計は別かなと思っていたのに、さらっと瀧川さんがまとめて支払う流れになっていた。
「えっ」
あの、とお財布を出す。
ゆっくりこちらを振り返って瞬きをした瀧川さんは、開きかけた私の長財布を認めて、いえ、とあくまで穏やかに首を振った。
「あなたのそういうしっかりしていらっしゃるところは、美徳ですし、素敵だと思いますが。今日のお礼も兼ねておりますのでお気になさらず」
「いえ、でも」
今日のお礼だなんて、むしろ私がお邪魔する方なんだから、ご馳走していただくわけにはいかない。
自分でお支払いする気だったから、たい焼きのことを鑑みてそんなにたくさん注文していないとはいえ、遠慮なく好きなものを頼んだつもりだ。
瀧川さんが多く食べたわけでもない。ふたりとも同じものを頼んだのに、瀧川さんにお支払いをお任せするだなんて、あんまりにも申し訳なさすぎる。
……こういうとき、なんて言ったら角が立たないんだろう。
私に恋人はいない。
友人なら最初から割り勘で、きっかり等分するか、お会計を分けるかする。
誰かとそういう甘い……のかよく分からないけれど、とにかくこういうお会計をしたことはない。
経験がなさすぎて、よく分からなかった。