小倉ひとつ。
お座敷を出てお会計をして、練り切りを買うべく商品棚を見る。


私の方が先に決まったので、先にお会計を済ませることにした。瀧川さんはのんびり商品棚を眺め直しながら選んでいる。


私はさっき迷った片方だからすぐに決まったけれど、瀧川さんは今いただいたばかりのもの以外の中からひとつ選ぶことになるわけで、選択肢が多いもんね。

時間がかかるのは当然だろう。


お会計から戻ってくると、瀧川さんが、練り切りの商品棚のそばにある、お抹茶の商品棚を見ていた。


あれ。お待たせしちゃった……?

私がお会計を済ませてる間にお菓子を選び終わってしまって、手持ち無沙汰でなんとなく見てた、とかだったら申し訳ない。


試飲もできるのが売りのお座敷なので、お茶はお座敷で手渡されたメニューに書いてあったものが一通り陳列されている。


粉末タイプは基本百グラムからで、袋に詰められているものと筒型の容器に入っているものが隣り合わせで並べられていた。


「お待たせしました」


一応声をかけつつ近寄ると、いえ、と微笑んだ瀧川さんは、陳列されたお茶に目を落としながら何気なく聞いた。


「お茶、立花さんはどちらがお好きですか。先ほどのおすすめ以外に何かおすすめのものはありますか?」


ああ、手持ち無沙汰に眺めてたわけじゃなくて、ちゃんと選んでらしたのか。


あれかな、また来たいって思ってくださったのかな。そのときに試してみるってことだろうか。

いや、でもさっき一応、季節が変わったらまたご一緒しましょうって約束したんだから、今すぐ必要なものなんじゃないだろうか。


うーん、ご自分用かな。


そうしたらこれ一択だろう。いいものなのでちょっとお高いけれど、とにかく美味しい。
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