小倉ひとつ。
「ありがとうございます。私もご一緒したいです。私のぶんも点ててしまいますね」

「……無作法者で、わがままを申してすみません」

「いいえ!」


申し訳なさそうに目を伏せた瀧川さんに、思わず強く返事をしていた。


「いいえ」


もう一度繰り返す。


全然全然、わがままなんかじゃない。むしろ、いろいろを鑑みてそろばんを弾いた瀧川さんの気遣いだ。


必死に見つめた先で、ゆっくり目が合う。


「とんでもないです。私もご一緒したいです。嬉しい、です」


うまく言葉が出てこなくて途切れ途切れになったけれど、笑われなかった。


はい、とかすれた返答が響く。


「ありがとう、ございます」

「いいえ。こちらこそありがとうございます。少々お待ちください」


はい、と再び寄越された返事は、今度はかすれていなかった。
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