小倉ひとつ。
「改めまして、上達おめでとうございます」

「ありがとうございます」


お薄と小倉たい焼きを差し出す。


礼儀正しく私から手元のお盆に視線を落として、「ありがとうございます」ともう一度受けた瀧川さんは、そういえば、と楽しげな微笑みを浮かべた。


「今朝お誘いしたたい焼きですが、せっかくですから、何か小倉以外で作ってみませんか」


そっか、小倉はレシピをお伝えしてご一緒したけれど、稲やさんで作っている季節のたい焼きみたいに他のもので作ったことはないもんね。


うーん、そうだなあ。

抹茶……は合いそうであれば点てるつもりだから、別のものがいいかな。


「瀧川さんはどういうものが食べたいですか?」


もしご一緒するなら多分、頑張ってはみるけれど、前回と同じような精算になるはず。


ほとんどごちそうになるのと同じだもの、希望を聞いた方がいいだろう。


空になったお盆を引き寄せつつ聞いてみる。


「そうですね、カレーとか。たい焼きがご飯になったら嬉しいかなと思いまして」

「カレーいいですね。たい焼きは甘いものも美味しいですが、ご飯みたいなものもきっと美味しいですよね」


瀧川さん、本当にたい焼きお好きなんだなあ。


そうだよね、甘いおやつなたい焼きでさえご飯にしたいくらいお好きなんだから、ご飯の代わりになりそうなたい焼きだってお好きに決まっている。


私も、ご飯の代わりになるたい焼きならお昼を挟まなくてもいい。

お昼時に食べるのもいいかもしれない。
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