小倉ひとつ。
迷惑なわけがない。


むしろ大歓迎というか、もしご一緒してもお嫌でなければ私からお誘いしたいし、お昼の時間を変えていただけないか稲中さんにご相談するし、たとえ激辛カレーだって頑張って食べます。

いや、瀧川さんは相手に無理をさせるような方ではないけれど。


でも、そっか。


私に気を使ってくださったなら、あのとき頑張ってお聞きしてご一緒すればよかった。


ご一緒したいですってお伝えするときはいつも、社交辞令みたいに装ってたからだよね。

私が怖がりだから。

だから瀧川さんにいらない気遣いをさせてしまって——あれ。それってまさに今もじゃないだろうか。


『いいえ。迷惑だなんてそんな、お誘いくださったら喜んでご一緒しましたのに』


自分の返答を反芻する。


これは多分、どう考えても、社交辞令に聞こえてしまっている気がする。

いや絶対そうだよ、社交辞令に聞こえるように言ったんだから当然だけれど、これじゃ社交辞令以外に聞こえないよ……!


気づいてひゅうと息を飲んだ。


それじゃ駄目だ。やっぱり駄目。


「あの、瀧川さん……!」


強張る唇を、強引に動かす。
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