小倉ひとつ。
『せっかくですから、社会人初勤務の前にお時間があれば、その日にしましょうか。慣れていらっしゃるとはいえ、初めの頃は予想外に緊張して疲れてしまうかもしれませんし』

「お気遣いありがとうございます。お恥ずかしながら、きっと疲れると思います……」

『いえ。新卒のときは俺もとにかくいっぱいいっぱいでしたから』


どうかご無理なさらずに、と瀧川さんが優しく笑った。


瀧川さんは完全に新しい環境でのスタートだし、一人暮らしを始められてるし、覚えることがたくさんあるうえに飲み会とか食事会とかが重なってすごくつらい始まりだったと思うので、もう本当にお疲れさまです、という気分。


私はそう考えると幸運だよね。


立ち仕事とはいえ見知った場所で、実家暮らしで、飲み会も食事会もないうえに、完全週休二日制で、大抵定時で必ず帰らせてもらえる。


稲中さんがどんなに忙しくてもお昼休憩は必ずまとまった時間をとるから、他の人もきちんと遠慮しないでまとまった時間をとれるし。


この間今後について詳しくご相談する機会を作っていただいて、雇用契約について細かい確認をした。

家族にも報告をして、おめでとう、と二度目のお祝いをしてもらった。


今のところ、大変素敵な環境だなと思っています。ありがとうございます。


新生活はきっと大丈夫だって、稲やさんでなら信じられる。


お仕事を頑張らなきゃなあって改めて思い直した。
< 320 / 420 >

この作品をシェア

pagetop