小倉ひとつ。
「イタリアンとかフレンチとか、洋食が好きです。アレルギー等は私も特にありませんが、相変わらずからすぎるものはあまり得意ではありません」


ひとまず前情報を述べてから、ちょっと迷って。


「すみません、お店は瀧川さんにお任せしてもよろしいでしょうか」

『ええ、もちろんです。お任せされました』


おそるおそるのお願いに、ふわっと了承してくれた。ありがたい。


気に入ってくださるといいんですが、と言われたけれど、大丈夫です、絶対気に入ると思います。


禁煙席がいいなとかあんまり騒がしい飲み屋さんは嫌だなとか、簡単な好き嫌いはあるけれど、基本的には、瀧川さんとご一緒できるならどんなところでも構わない。

瀧川さんは煙草を喫む方ではないから禁煙席だと思うし、ふたりでお出かけするのに飲み屋さんを選ぶような方ではないと思うし。


お祝いなのにチェーン店とかファーストフード店とかだとちょっぴり悲しいけれど、私が入りやすいお店を選んでくださったのかなって思うくらいには、お祝いって言葉に浮かれている。


それに、瀧川さんはセンスがいい方だもの。


そのセンスは、元々ご家族で記念日には素敵なお店でお食事をされていたことだけではなくて。


……これまでお付き合いされた方と、多分そういう素敵なお店でお食事されてたことが関係しているんだろうなって分かってしまうくらい洗練されているのが、少し寂しいけれど。
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