小倉ひとつ。
「っ」


珍しく遮った瀧川さんの、あまりの甘さに喉が詰まる。


初めてだった。


優しい微笑みがにじんだささやきは、今まで聞いたことがないほどひどく甘い。


おそらく無意識の声色に、スマホを近づけていた耳が熱を帯びた。


電話で助かったなのか、電話だから聞けてよかったなのか。私は両方ですけれども。

電話でお顔が見えなくてよかったと思ってるし、電話で声が聞けてよかったと思ってるし。


というか、まずい。ちょっと心臓がうるさすぎる。


『お祝いですから、ディナーはごちそうさせてください。本当はランチもこちら持ちで構わないんですが』

「だ、駄目です! とんでもないです、こちらこそどちらも自費で構わないくらいで……!」


そうおっしゃると思いました、と瀧川さんが笑う。


『せめて、ディナーだけでもごちそうさせてくださいね。ランチとディナーの間にどこか行きたい場所はありますか?』

「えっ、ご一緒してくださるんですか」

『もちろんです。ランチの後一度解散してまた待ち合わせしてディナーだなんて、そんなもったいないことしません』


ひえ。瀧川さんが急に甘いことを言い始めた……!
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