小倉ひとつ。
身長はヒールを履けばいい。それでも届かなかったら段差を利用するとか、座るとかすればいい。


手の大きさは骨格を変えようがないので無理だけれど、繋いだ手のひらからゆっくり混ざる体温が同じなら別にいい。

口調はいくらでも気をつけられる。大人らしいメイクだってできる。


でも、年齢は、どんなに大人になろうとしても、どんなに背伸びをしても、どうしたって事実だから、誤魔化しが効いてくれない。


私にとっては、手の大きさみたいにささいなことじゃない。年の差を明確に数えてきた過去がいつまでも頭をよぎるから。


お祝いをしてもらえるのはすごく幸せなことだけれど、何より幸せなのは、今だけ要さんが七つ上になること。


どうしようもなく縮まらない寂しさを、優しく覆い隠してくれる数ヶ月間が来ること。


私の好きな八つ年上のお兄さんは、この間八つ年上の彼氏になった。


そして今、今だけは、八つじゃなくて、七つ上の好きなひとなのだ。


指を折る回数がたった一回減るだけなのに、泣きたいくらいだった。
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