小倉ひとつ。
私が要さんより遅く生まれていたらこうはならなかった。

要さんが私より早い月に生まれていたらこうはなかった。


プレゼントはもちろん嬉しい。お祝いも嬉しい。そもそも要さんが彼氏でいてくれること自体が夢みたい。


でも、泣き濡れた過去に、諦めなきゃって言い聞かせた理由に、擦りきれた戒めに、私が背伸びをしなくても優しいいろいろが付随するのは、今だけなのだ。


全然そんなことはないんだけれど、要さんにひとつだけ追いつけたみたいで嬉しい、と送ると、短い返事が来た。即答だった。


『九月が来なければいいのに』


優しくて穏やかな、甘い微笑みで再生される。


ぎゅう、とスマホを持つ両手を握った。


『来てくれないとお祝いできないから嫌だよ。お祝い、させてね』


約束したじゃない、と送ると。


『うん。ありがとう』

『いいえ』


勝手にいろいろがあふれそうだったから、なるべく短く返事をして、吐き出すみたいにそっと笑った。


湿った呼吸でクッションを抱きしめる。


関係が変わっても、七つでも八つ上でも、私たちはどうしようもなく年上と年下だった。
< 360 / 420 >

この作品をシェア

pagetop