小倉ひとつ。
朝、家族がこまごましたプレゼントをくれた。


お礼を言いつつ出勤すると、胡麻の日だからか、要さんは決め打ちしていたらしい迷いのなさで胡麻をお持ち帰りした。


稲中さんご家族はお祝いと少し早めの帰宅をくださった。冷蔵品じゃないのは、持ち歩きのことを考えてだろう。


お仕事終わりに集合して、お互いの職場から少しずつ離れたお店に入る。


場所はパティスリーに付随した小さなイートインで、簡単にケーキだけと言ったけれど、お祝いっぽくなるように考えてくれたものと思われた。


宝石みたいに美しいフランボワーズのケーキをお願いしたら、同じものを注文した要さんに、「お酒入ってるって書いてあるけどいいの?」と分かっている顔でからかわれた。


「ケーキに入ってるくらいで酔うほど弱くないよ」


そうだよね、そうだよ、ごめんごめん、とお互いお冷やを傾けながら笑い合う。


「ウイスキーボンボンは?」

「ウイスキーの度にもよるかなあ。結構度が高かったみたいで、ちょっとむせそうになったことはある」

「なるほど」

「うん。というか要さん、フランボワーズ好きなの?」


今までのお土産や差し入れをするときに聞き出した情報によれば、ベリー系じゃなくて柑橘系が好きじゃなかったかな、覚え間違ってたかなと思って首を傾げたら。


「ん? ああ、かおりと同じの食べたいなと思って」


にっこり微笑まれて撃沈した。
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