小倉ひとつ。
「ええと、あのね。じゃあ、もしよかったら、もしよかったらなんだけれど」

「うん」

「もし今週末あいてたら、お出かけしたい」


要さんがそっと笑った。ひどく甘い微笑みだった。


「うん、あいてる。土曜日で大丈夫?」

「大丈夫」

「どこ行きたいか考えておいてね。それとも俺が考えようか?」

「私が考えてみる。思いつかなかったら一緒に考えてくれる?」

「もちろん」


今までは、行事にかこつけてできることと言ったら差し入れくらいだった。


せっかく関係が変わったんだもの、お花見を一緒にしてみたい。

一日だと疲れてしまうと思うけれど、多分お昼ご飯くらいなら大丈夫。


お花見ができるカフェを探してそちらをお願いした。


そうだ。週末のお出かけには、久しぶりにお気に入りのイヤリングをして行こうかな。


ピンクゴールドのハート形に伴って、お座敷で触れられたときの熱を思い出した。

あれから少ししか経っていないのに、随分前のことのような気がする。


一人称が変わって、呼び名が変わって、口調が変わった。距離が近づいた。


長い長い恋を、諦めずに抱えていられることになった。


最近、まるで夢みたいに幸せな日々が続いている。

もし誰かからこの一年こそがお祝いだって言われたとしても、すんなり納得しちゃうくらい。


これからもたくさん一緒にお出かけできるといいなあと思った。
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