私のご主人様Ⅱ

「こっちも準備するに越したことはないだろうなぁ」

源之助の言葉に場の空気の緊張が増す。

その言葉は、来る抗争に対抗するということ。話し合いなどの解決ではなく、力によって相手を制するということ。

何が出てきてもおかしくない抗争が起こると言うこと。

「親父、先手を打つのは」

「それはなしだ。こっちは先に手は出さねぇ。迎え撃つ」

「組長、それはここちゃんを危険にさらすってことでいいんですよね?ここに攻め込まれたら、間違いなく巻き込みますよ」

伸洋が、季龍の表情を険しくさせる。

だが、それは的を射た指摘で、誰にも反論はできない。

それでも、源之助は下した判断を覆すことはない。むしろ、試すような目で組員たちを見渡した。

「お前らは琴葉ちゃんが傷つくとこまで敵に踏み込ませるのか?」

その言葉の意味することは、ほぼ負けを意味しているのだと組員たちは理解する。

琴葉がいるのはこの本家の中。場合によれば琴葉を屋敷の奥に避難させるだろう。

それでも琴葉が敵の手によって傷つくと言うことは、そこまで敵に踏み込まれると言うことだ。
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