私のご主人様Ⅱ
「自信がないっていうなら仕方ない。こちらから仕掛けるのもありだろうな」
源之助の更なる言葉に、先に仕掛けようという言葉は誰の口からも出せない。
琴葉を守れる自信が、この屋敷を守れる自信がないと公言するようなものだ。そんな、自らが弱いと言うだけでなく、永塚組が弱いと言えるような組員は誰もいない。
「はぁ、組長には敵いませんよ」
降参と両手を上げる伸洋に、源之助は口角を上げる。
その言葉に、方針が決定する。
「いいか、静かに行動しろ。恐らく抗争は夏が過ぎたらだ。それまで決して向こうに悟られるようなことはするな」
「「「「「はい」」」」」
源之助の言葉に野太い返事が響く。
季龍からそれぞれの、細かな指示が与えられると各々の表情は更に引き締まる。
源之助はその様子を静かに見つめ、口角を上げる。
後継者の、まだ乱暴さがある采配に、安心するような、苦笑するような顔で見守り続けていた。