旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~



ピアニストだった、ということを知っているということは手を壊し引退したということもきっと知っているはず。

それでも尚玲央さんにピアノを、と言うということは彼に『弾けない』と言わせて恥をかかせようとしていることは明らかだ。



それを裏付けるように、関さんは周りに聞こえるように声を大きくする。

その声に周囲の人々は「立花さんのピアノ?」「天才ピアニストの復活か!」と期待に膨らむ声を出した。



どうしよう。これだけ周りが騒ぎ出すと、玲央さんもあしらえない。けど……思い出すのは、以前玲央さんが話してくれたこと。



『手は治ってるのにトラウマになってて、人前ではピアノが弾けなくなるなんて』



人前で彼の手が動かなくても、関さんの思うツボだ。

人々の視線がピアノと玲央さんに集まる中、関さんは思惑通り、とでもいうかのように嫌な笑みを浮かべている。



けど、そのまま玲央さんをピアノに向かわせることはできない。

待って、これ以上、その心を傷つけないで。


その一心で、私は玲央さんの背中を押す関さんの腕をガシッと掴んだ。



「待ってください!」



突然のその声に、玲央さんと関さん、そして周りの人は驚いた顔で私を見た。



「……なにか?婚約者さん」

「あの……玲央さんは、その、今日はあまり調子がよくなくて、……だから」

「なにをおっしゃるんですか。天才ピアニストと呼ばれたような方ですよ?少しの不調くらい、大丈夫ですよねぇ」



それでも、関さんは譲ることはない。



< 108 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop