旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「それとも、代わりにあなたがピアノを弾いてこのパーティーを盛り上げてくださいますか?……まぁ、素人が下手な演奏をしても恥をかくだけだと思いますけど」
分かってる。こんな引き止め方をしても、この人がこの機会を逃すわけがないし、余計に人々の目は集まり、部が悪くなるだけだと。
だけど、これ以上玲央さんから、ピアノという存在を遠ざけてしまいたくない。
沢山傷ついただろうその心を、守りたい。
なのに、どうして私にはなにもできないんだろう。
上手な言葉のひとつも出てこなくて、子供のように引き止めることしか出来ない。そんな自分が悔しくて、手が微かに震えだす。
すると、そんな私の手をそっと包む大きな手の感触。
それは玲央さんのもので、彼は私の手を握ると、関さんから離させた。
「玲央、さん……?」
「杏璃。大丈夫だから」
でも、と言葉を続けようとするものの、彼が見せた優しい笑みに、その言葉が強がりではないことが感じられた。
玲央さん……?大丈夫、なの?
こちらの不安を拭うように、玲央さんはぽん、と私の頭を撫でると、そのまま目の前のピアノにつく。
そしてフタを開け、手を添えると、そっと鍵盤に触れた。