旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
ゆっくりと玲央さんが弾き始める曲は、初めて耳にする曲。
クラシックの一曲なのだろうか、その曲は希望を感じさせるような明るいメロディーだ。
所々に低い音が入り、重みのある音が切なさを響かせるけれど、流れるように動く指先が奏でる音たちが幸福感で包んでしまう。
その曲に、その場にいた全員が言葉を発することなく聴き惚れた。
それは、それまで嫌味な笑みを浮かべていた関さんも、そして私も同様で、一瞬で彼の音色に惹きつけられ、その世界に入り込む。
幸せな、音色。
鍵盤ひとつすら間違うことなく、細かに鍵盤を素早く叩く。
きっと、他の誰かが弾いても同じ音は出せない。
それは、幼い頃からピアノに向き合ってきた彼だからこそ奏でられる曲なのだろうと思った。
見惚れるうちに、最後の音の余韻が消える。
その瞬間、時間が止まったかのように会場内はシン、と静まり返り、ひと呼吸おいてから一斉に歓声があがった。
「素晴らしい!さすが立花さんだ!」
「素敵だったわ……ぜひもう一曲お願い出来ないかしら!」
拍手と絶賛の声に、玲央さんは安心したように息をひとつ吐くと、イスから立ち上がる。
「突然お騒がせして申し訳ありません。一曲だけ、余興として弾かせていただきありがとうございます」
言いながら深く礼をすると、彼は私の隣の関さんを見て手で示す。