旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
はっ!そうだ、この部屋には入らないよう言われていたんだった……!
「れ、玲央さん、すみませ……」
「触るな」
「え?」
いつものように『だからお前は』と叱られる、そう思ったけれど、たったひと言で彼の雰囲気がそれとは違うことを感じた。
「ここには入るなって言っただろうが。今すぐ出ろ」
「けど、あの……」
「言われたこと以外勝手なことをするな。……それにも、触るな」
玲央さんは抑揚なくそうはっきりと言い切ると、冷ややかな目を逸らし部屋を出る。
それはまるで、部屋の空気に触れることすら拒むように。
謝ることや言葉を挟む隙すら与えてくれなかった。けれどほんの一瞬のそれだけで、分かった。
……怒らせ、た。
『怒ってる』とか『ムカつく』とか、玲央さん自身がそんな言葉を使わなくても、はっきりと伝わってきた。
そんな彼を呼び止めることも出来ず、私はそっと、ピアノの蓋を閉じた。
いつもの雰囲気と全然違う。嫌味ひとつを言う気にもならないくらい、怒ってる。
……けど、あんなにきつく言わなくてもいいじゃない。ちょっと触っただけなのに。
そう心の中で言い訳をしながら、本当はちゃんと分かってる。
勝手に触れた、自分が悪いこと。