旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~



はっ!そうだ、この部屋には入らないよう言われていたんだった……!



「れ、玲央さん、すみませ……」

「触るな」

「え?」



いつものように『だからお前は』と叱られる、そう思ったけれど、たったひと言で彼の雰囲気がそれとは違うことを感じた。



「ここには入るなって言っただろうが。今すぐ出ろ」

「けど、あの……」

「言われたこと以外勝手なことをするな。……それにも、触るな」



玲央さんは抑揚なくそうはっきりと言い切ると、冷ややかな目を逸らし部屋を出る。

それはまるで、部屋の空気に触れることすら拒むように。





謝ることや言葉を挟む隙すら与えてくれなかった。けれどほんの一瞬のそれだけで、分かった。



……怒らせ、た。

『怒ってる』とか『ムカつく』とか、玲央さん自身がそんな言葉を使わなくても、はっきりと伝わってきた。

そんな彼を呼び止めることも出来ず、私はそっと、ピアノの蓋を閉じた。



いつもの雰囲気と全然違う。嫌味ひとつを言う気にもならないくらい、怒ってる。



……けど、あんなにきつく言わなくてもいいじゃない。ちょっと触っただけなのに。

そう心の中で言い訳をしながら、本当はちゃんと分かってる。



勝手に触れた、自分が悪いこと。







< 51 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop