旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「……はぁ」
ピアノの一件から、数時間後。
夕陽の沈みかける空の下、私の姿は立花家の裏にあった。
勝手口から出たところで段差に腰掛けた私は、長谷川さんがいるキッチンから漂ってくるソースのいい香りを嗅ぎながらも、ため息をこぼす。
そんな私の隣には、ノワールがふせ、ぴったりと体をくっつけている。
そっと頭を撫でるとノワールからは「ワフッ」と気持ちよさそうな息を漏らした。
「いちご、いかがですか?」
「はい、いただきます……って、え?」
突然差し出された、真っ赤ないちごに、一度はそれを自然と受け取りながら驚き振り向く。
見ればそれは、キッチンで料理の支度をしているはずの長谷川さんから差し出されたものだった。
「長谷川さん……ご飯の支度の途中なんじゃ?」
「煮込み中でひと休みです。なのでおやつにいちごでも食べようかと思いまして」
「ありがとう、ございます……」
真っ赤な色の大きないちごをひと口でぱくっと食べると、みずみずしい甘みが口に広がる。
「ん……あまーい!美味しい!」
「山梨にいちご狩りに行った友人から頂いたんです」
その甘さに顔をほころばせる私に、長谷川さんも少し嬉しそうに笑った。
私の横ではさっきまでくつろいでいたノワールが体を起こし、長谷川さんの持つボウルの中のいちごをくんくんと嗅いでいる。