長い夜には手をとって
一瞬入ってきた外の空気で、私は少し集中力が途切れてしまう。バラエティー番組で、司会のお笑いタレントが喋る言葉がちっとも頭に入ってこなくなった。
「・・・えーっと・・・」
何だか所在なくなってしまって、意味もなく椅子から立ち上がる。そして何してるんだと自分で思って座りなおしたりした。テレビに顔を向ける。でもやっぱり司会のお喋りは耳に入ってこない。うーん・・・。
ちらりと庭の方へ目をやった。
カーテンが少し開いた向こう側、真っ暗な夜が見えている。
この寒いのに、外で・・・。
「・・・よし」
私は立ち上がってテレビを消した。
会社から戻った時にお代わりを阻止されて残念そうな顔した伊織君の顔が浮かび上がってきたのだ。コーヒーを淹れてあげよう。熱々を、たっぷりと。
お湯を沸かし、自分が買って来たマグカップになみなみとコーヒーを淹れる。伊織君はちゃんと使ってくれているようで、前使っていたマグカップは戸棚の奥に押しやられていた。
彼はブラックで飲む。
ついでだからと自分用にも淹れて、それは砂糖もミルクもたっぷりといれた。
マグカップを持って掃き出し窓の所へいき、コーヒーを零さないように気をつけながらカラカラと窓を開けた。
「――――――あれ?凪子さん」
伊織君が振り返って、目を丸くする。私は片手で持った伊織君用のマグカップをあげてみせた。
「寒いでしょう、コーヒーの差し入れだよん」
「おお~!うわー、嬉しい」