長い夜には手をとって
縁側の上にあぐらをかいて膝の上に毛布をかけ、右手にタバコを持った伊織君が体をずらして場所を開けてくれる。
「凪子さんも良かったら、どお?ここでコーヒー」
「え」
私がちょっと躊躇していると、彼はいつもの大きな笑顔を浮かべた。
「寒いからさ、熱いのが美味しいんだよ」
そのにこにこ顔を見ていたら、私もついその気になる。じゃあ、お邪魔しようかな。そう言って、自分の分を取って戻ってきた。
「ついでに東さんのお土産の、あまーいカナダのチョコですよ~」
「おおー!これはゴージャスだなあ!さあさあ、ようこそ夜の星観賞会へ」
伊織君はそう言って、私が隣に座ったのを確認してから毛布をわけてくれる。縁側は狭いので、あぐらをかく伊織君でほとんど使ってしまう。だから私は立膝をして、その上に毛布をかけた。どうしても接近せざるを得ないから、心持ち、距離をあけて。
「ここで星を観賞してるの?」
そう聞くと、咥えタバコのままで、伊織君が頷いて上を指差した。
「やっぱり冬は空が澄んでるよね。よく見えるんだよ」
私も上を向く。夏場にはここで綾とよくビールを飲んだけれど、専らお喋りで空なんか見上げたことがなかった。
庭と同じ2畳くらいに開けた夜空。確かにそこには、狭く区切られた中にも星空が広がっていた。
「・・・ああー・・・本当だ、見えるんだね」
私の吐く息が白く、夜空に上がっていく。しんしんと静かに外は冷えていたけれど、両手に熱いマグカップを持ち、下半身は毛布にすっぽりと包まれているのであまり寒さを感じなかった。