長い夜には手をとって


 だって、何か・・・全身眺められてるような。見せ物のようでいい気分ではない。モデル志望じゃないぞ。

「あのー、水谷さんを呼んで頂きたいんですけど」

 痺れをきらして私がそう言うと、女の子はハッとしたように体をずらしてドアを開ける。

「あ、どうぞ。こっちです」

 呼んではくれないらしい。そして、ここで預かってもくれないらしい。

 女の子は奥に通じるドアに入っていってしまい、私は首を傾げながらついていく。いいのか、部外者が入っても?

 奥へのドアを抜けると、そこには長い廊下があって、右手はスタジオらしい。ドアに番号が振ってあった。音楽や人の話し声がそこから漏れ出してきている。女の子に続いてそのまま奥まで歩くと、スタッフオンリーの文字が貼られたドアにたどり着く。

「右側が水谷さんのスペースです」

 女の子はそう言ってドアをあけ、後はもう黙って廊下を行ってしまった。

 ・・・何だよ、愛想がないよ~、君。私は多少気分を害しながら、手を伸ばして開けられたドアをノックする。

 不透明なガラスのパーテーションで大雑把に5つほどに仕切られたその部屋には、それぞれに作業机や本棚なんかが詰め込まれ、個人のスペースになっているらしい。映画やドラマなどでよく観る『新聞社の編集部』のような雑然とした部屋だった。入口にあったあのお洒落な空間とはかなり違って、働く場所なんだなあ!という感じだ。

 そのうちの一つから、はーい、と声が上がって男性が立ち上がった。

「すみません、水谷さんの机はどちらでしょうか」


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