俺様社長と付箋紙文通?!
帰る客と入れ替わりに並んでいた連中が店に入る。じきにあの女学生モドキもやってきた。彼女はなんと奥の4人掛けのテーブルに案内された。その席は窓側で、大きな窓からは赤くそびえ立つ東京タワーもみえた。特等席だ。あんな庶民にあの席とは。まったくもってけしからん。女学生モドキはにやにやとチケットと窓枠に映る東京タワーを交互に眺め、鼻歌でも聞こえてきそうなほど上機嫌だった。くそ。なんであんなに楽しそうなんだ。こっちは仕事で超つまらないのに、だ。
「宮下、あの女と席を変わる」
「かしこまりました」
秘書宮下はすっと立ち上がると能面の顔で彼女に近づいた。直に女学生モドキが立ち上がり、こちらへ来た。
*−*−*
エビチリをオーダーしてふふん♪と鼻歌を歌っていると、いつのまにか黒づくめの女性がそばに立っていた。さっき順番を飛ばしたシャチョーさんにお仕えしているひとだ。黒ぶち眼鏡の奥の切れ長の目が私をにらんだ。なにかしてしまっただろうか、私。
「席、変わってくださる?」
「はい?」
「あとから来て、しかもひとりで窓側の席はおかしいでしょう。こっちは商談できているのに困るわ」
「はあ」
私はちょっとむっと来た。確かに4名席をひとりじめは肩身が狭いけど、たまたまこの席になっただけだ。それを割り込みしたひとたちに言われたくはない。まあでも別に景色を見たくてここに来たんじゃないし、タダ券で来ているのもあって私は席を譲ることにした。
席を立ってあのシャチョーさんが腰掛けている長テーブルに向かった。彼とすれ違いざま、ぎろりとにらんでやったけど、まったくこっちを見ていなかった。雲の上にいる人間は雲の下の人間には興味がないらしい。ありがとう、くらい声をかけてくれてもいいのに完全無視だ。
「おまちどうさまです! エビチリです!」
私の目の前にお膳が置かれた。中央に鎮座するのはエビチリ、左に白く輝くごはん、右にネギ入りスープ、左上にミニサラダ、右上にザーサイ。大ぶりのエビに甘辛いチリソースには溶きたまごがかきたま汁のように混じっていた。オレンジ色のソースのなかにふわふわと黄色い卵が泳いでいる。エビとごま油の香ばしさが鼻腔をくすぐる。
スプーンですくって口に入れる。辛い、甘い。そしておいしい。すごく後を引くおいしさだった。ごはんもお代わりした。
「宮下、あの女と席を変わる」
「かしこまりました」
秘書宮下はすっと立ち上がると能面の顔で彼女に近づいた。直に女学生モドキが立ち上がり、こちらへ来た。
*−*−*
エビチリをオーダーしてふふん♪と鼻歌を歌っていると、いつのまにか黒づくめの女性がそばに立っていた。さっき順番を飛ばしたシャチョーさんにお仕えしているひとだ。黒ぶち眼鏡の奥の切れ長の目が私をにらんだ。なにかしてしまっただろうか、私。
「席、変わってくださる?」
「はい?」
「あとから来て、しかもひとりで窓側の席はおかしいでしょう。こっちは商談できているのに困るわ」
「はあ」
私はちょっとむっと来た。確かに4名席をひとりじめは肩身が狭いけど、たまたまこの席になっただけだ。それを割り込みしたひとたちに言われたくはない。まあでも別に景色を見たくてここに来たんじゃないし、タダ券で来ているのもあって私は席を譲ることにした。
席を立ってあのシャチョーさんが腰掛けている長テーブルに向かった。彼とすれ違いざま、ぎろりとにらんでやったけど、まったくこっちを見ていなかった。雲の上にいる人間は雲の下の人間には興味がないらしい。ありがとう、くらい声をかけてくれてもいいのに完全無視だ。
「おまちどうさまです! エビチリです!」
私の目の前にお膳が置かれた。中央に鎮座するのはエビチリ、左に白く輝くごはん、右にネギ入りスープ、左上にミニサラダ、右上にザーサイ。大ぶりのエビに甘辛いチリソースには溶きたまごがかきたま汁のように混じっていた。オレンジ色のソースのなかにふわふわと黄色い卵が泳いでいる。エビとごま油の香ばしさが鼻腔をくすぐる。
スプーンですくって口に入れる。辛い、甘い。そしておいしい。すごく後を引くおいしさだった。ごはんもお代わりした。