俺様社長と付箋紙文通?!
シャチョー……社長さんか。私は妙に納得した。ブランドのスーツにごつい腕時計、ほんのり香る高級そうな香水の匂い。気難しそうな顔がさらに険しくなった。
「はあ? 待つだと?」
「満席で次の空席ができ次第、ご案内になるそうです」
「しかたない」
「恐れ入ります」
私の前に並んでいたひとたちがざわめいた。20分も待ってるのに、とこぼしている。そうだ、社長だからって割り込みはよくない。どんなに偉い人でも食べ物の前では人類みな平等だ。文句が聞こえたのか、その背高のっぽの男性は私たちに一瞥をくれた。二重まぶたの大きな瞳でぎょろりとにらまれてみんなシンとなった。背が高いだけに気圧される。
社長業たるもの、そのくらい強気な性格でないと無理なのか。いや、あったか☆ドーナツのウォール社長は威厳もなければしたたかさもないぞ。でも小麦に対するこだわりだけはスゴいけど。
無言のブーイングを察した光琳スタッフがやってきて、行列のわたしたちに「いまお並びのかたまで時間を過ぎてもランチタイムのお値段にさせていただきます、それからミニ杏仁豆腐をサービスします」とのアナウンスした。ついさっきまで怒っていたみなはころりと態度を変えて、嬉々としている。この変わりようはなんなんだ。
それは私たちが平民だからだ。ミニ杏仁豆腐がついてもシャチョーさんは喜ばないだろう。
*−*−*
「エビチリを3人前」
「かしこまりました」
5分もしてようやく通された席は中央の8人掛けのテーブルだった。同じテーブルの女3人がこっちをじろじろと見ている。この俺を5分も待たせたうえに相席とはけしからん。しかも後や前を客や従業員がひっきりなしに通るせわしない場所だ……全くもってけしからん。あとでこの店主に厳重注意をしなくてはいけない。
食事を兼ねて会計報告ということだったが、まわりにこんなに人がいれば社の機密を大っぴらに話すこともはばかられる。黒澤所長のつまらんおべっかを右から左に聞き流し、エビチリの到着を待つ。あたりを見回せば、エビチリしかメニューがないのかというほどどのテーブルにもエビチリが運ばれている。よほどの名物なんだろう。俺はなんどもゴクリと唾をのみ込んだ。
「はあ? 待つだと?」
「満席で次の空席ができ次第、ご案内になるそうです」
「しかたない」
「恐れ入ります」
私の前に並んでいたひとたちがざわめいた。20分も待ってるのに、とこぼしている。そうだ、社長だからって割り込みはよくない。どんなに偉い人でも食べ物の前では人類みな平等だ。文句が聞こえたのか、その背高のっぽの男性は私たちに一瞥をくれた。二重まぶたの大きな瞳でぎょろりとにらまれてみんなシンとなった。背が高いだけに気圧される。
社長業たるもの、そのくらい強気な性格でないと無理なのか。いや、あったか☆ドーナツのウォール社長は威厳もなければしたたかさもないぞ。でも小麦に対するこだわりだけはスゴいけど。
無言のブーイングを察した光琳スタッフがやってきて、行列のわたしたちに「いまお並びのかたまで時間を過ぎてもランチタイムのお値段にさせていただきます、それからミニ杏仁豆腐をサービスします」とのアナウンスした。ついさっきまで怒っていたみなはころりと態度を変えて、嬉々としている。この変わりようはなんなんだ。
それは私たちが平民だからだ。ミニ杏仁豆腐がついてもシャチョーさんは喜ばないだろう。
*−*−*
「エビチリを3人前」
「かしこまりました」
5分もしてようやく通された席は中央の8人掛けのテーブルだった。同じテーブルの女3人がこっちをじろじろと見ている。この俺を5分も待たせたうえに相席とはけしからん。しかも後や前を客や従業員がひっきりなしに通るせわしない場所だ……全くもってけしからん。あとでこの店主に厳重注意をしなくてはいけない。
食事を兼ねて会計報告ということだったが、まわりにこんなに人がいれば社の機密を大っぴらに話すこともはばかられる。黒澤所長のつまらんおべっかを右から左に聞き流し、エビチリの到着を待つ。あたりを見回せば、エビチリしかメニューがないのかというほどどのテーブルにもエビチリが運ばれている。よほどの名物なんだろう。俺はなんどもゴクリと唾をのみ込んだ。