俺様社長と付箋紙文通?!
食後に杏仁豆腐が来た。赤い実のほかにタピオカも乗っている。なんか得した気分だ。
*−*−*
仙台支社長との面談を終えて、俺は屋上のヘリポートに来た。今日は快晴だが、風が強い。親父は大ぶりのサングラスをして俺を待っていた。こげ茶の革ジャンにストレートの野暮ったいジーンズ、昭和のハードボイルドよろしく恰好は決まってはいるが、背が低いのと髪が薄いのが残念なところだ。足をかけてブルーのヘリの後部座席に乗り込む。大ぶりのヘッドフォンにマイクのついた装置を頭にかぶる。ヘリ飛行中は飛行機と違って轟音で声が聞こえなくなるからだ。
そのヘッドセット越しに会話をする。
「親父、操縦は大丈夫なんだろうな」
「このくらいの風、へでもないぞよ。宮下女史は?」
「留守番だ。雑用がたまっている」
なんでもオオルリという鳥の色を真似た車体は親父の特注品だ。親父の親父、つまりは俺の祖父が営んでいた不動産業を引き継いでここまで大きくして金を稼いだんだから、多少の贅沢は構わないが。俺も本業の不動産業を引き継ぎつつ、コンサルタント業に足を突っ込んでいる。
バラバラと羽が音を鳴らして体がふわりと浮き上がった。瞬間、車体が横に揺れた。横風を受けたようだ。俺はバランスを崩して前のシートに頭をぶつけた。なにが大丈夫だ、と心の中で毒づきながら額を押さえると、下の景色が目に入った。ビルとビルの隙間に見える石畳のエントランスパーク、これは我がB.C. square TOKYOの玄関口だ、その中赤い屋根がぽつんと存在を主張していた。が、ヘリコプターが上昇して横移動を開始して、その赤い点はひゅんとビルの陰に消えた。
「エントランスに赤いのが見えたが」
「おとといオープンしたドーナツショップだ」
「あんなところに店を建てたのか?」
「移動販売車だよ。うまいぞよ」
「親父はもう食ったのか」
「ああ。とにかくうまい。行列必死の店になるぞよ」
ああ、大学時代の悪友ウォールの紹介だと秘書宮下の報告を思い出した。うまいのか。食ってみたいが、下界まで移動するのが面倒だし、大の男が甘いもんを買い求める列に並ぶとはみっともない。宮下に買い物を頼むか。雑用だらけの彼女に頼んだら張り倒されそうだが、視察という名目でドーナツを買い求めておくよう、彼女にメールを送った。
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仙台支社長との面談を終えて、俺は屋上のヘリポートに来た。今日は快晴だが、風が強い。親父は大ぶりのサングラスをして俺を待っていた。こげ茶の革ジャンにストレートの野暮ったいジーンズ、昭和のハードボイルドよろしく恰好は決まってはいるが、背が低いのと髪が薄いのが残念なところだ。足をかけてブルーのヘリの後部座席に乗り込む。大ぶりのヘッドフォンにマイクのついた装置を頭にかぶる。ヘリ飛行中は飛行機と違って轟音で声が聞こえなくなるからだ。
そのヘッドセット越しに会話をする。
「親父、操縦は大丈夫なんだろうな」
「このくらいの風、へでもないぞよ。宮下女史は?」
「留守番だ。雑用がたまっている」
なんでもオオルリという鳥の色を真似た車体は親父の特注品だ。親父の親父、つまりは俺の祖父が営んでいた不動産業を引き継いでここまで大きくして金を稼いだんだから、多少の贅沢は構わないが。俺も本業の不動産業を引き継ぎつつ、コンサルタント業に足を突っ込んでいる。
バラバラと羽が音を鳴らして体がふわりと浮き上がった。瞬間、車体が横に揺れた。横風を受けたようだ。俺はバランスを崩して前のシートに頭をぶつけた。なにが大丈夫だ、と心の中で毒づきながら額を押さえると、下の景色が目に入った。ビルとビルの隙間に見える石畳のエントランスパーク、これは我がB.C. square TOKYOの玄関口だ、その中赤い屋根がぽつんと存在を主張していた。が、ヘリコプターが上昇して横移動を開始して、その赤い点はひゅんとビルの陰に消えた。
「エントランスに赤いのが見えたが」
「おとといオープンしたドーナツショップだ」
「あんなところに店を建てたのか?」
「移動販売車だよ。うまいぞよ」
「親父はもう食ったのか」
「ああ。とにかくうまい。行列必死の店になるぞよ」
ああ、大学時代の悪友ウォールの紹介だと秘書宮下の報告を思い出した。うまいのか。食ってみたいが、下界まで移動するのが面倒だし、大の男が甘いもんを買い求める列に並ぶとはみっともない。宮下に買い物を頼むか。雑用だらけの彼女に頼んだら張り倒されそうだが、視察という名目でドーナツを買い求めておくよう、彼女にメールを送った。