俺様社長と付箋紙文通?!
ずかずかと大理石のフロアを踏みつけて歩き、高級レストラン街から直通のエレベーターで41階に降りた。社長室に入ると特注品のイタリア製高級チェアに親父が腰かけていた。膝に穴があいた白いジーンズ、黒のライダースジャケット、赤いバンダナを細く折って頭に巻いている。いつものことだが、どうにかしたいファッションだ。
「親父、それは俺の椅子だ」
「んぐんぐ(はいはい)」
親父は立ち上がってチェアをあけた。俺はすぐさまどすんと腰かける。
親父は棒を握ってうずまきドーナツをかじっていた。今日の夜食にと秘書宮下が買っておいたものだろう。かんぴょう入りプレーン生地にピスタチオチョコ、シナモンパウダー。毎日食べていると見た目でドーナツの種類がわかるようになる。つぶの大きさと色からして煮りんごではなくかんぴょう煮、同じ緑でも薄めのグリーンはピスタチオだ。
親父はすごくうまそうに食べている。俺が食うはずだったドーナツを。くそ。いや、俺はドーナツが食べたかったんじゃない。ただ腹が減っているだけだ。なんでもいいから腹に入れたい。それを俺の目の前で。しかも満足げに。くそ親父め。
ごくり、と喉をならして親父は飲み込んだ。恨めしくて、にらむ。そんな俺に気づいた親父はきょとんとした。
「あれ? お前、予約したんじゃなかったのか、鉄板焼き」
「ああ」
「当日でしかも予約時間を過ぎてたのではキャンセルもできないだろうに。代金は戻らんぞよ」
「そんなはした金、どうでもいい。たかだか30万だ」
「待ち人来たらずか? 丈浩もフラれることがあるのか」
「うるさい。待ち合わせの女は来たんだがな、ちょっと手違いがあって一緒に食うのをやめた」
「ふうん。やめたねぇ。じゃあひとりで飯をくってるのか、彼女」
「たぶんな」
「まったく。丈浩をそんな男に育ては覚えはないぞよ。女に恥をかかすとは……亡くなった母さんも嘆いてるぞよぉ」
親父は伏し目がちに、ため息をついた。そして手の甲で口角に着いた粉糖をぬぐう。一瞬ぴたりと動きを止めて、俺を見、にやりと笑った。こういうときの親父は何を考えているか察しがつかん。不気味だ。嫌な予感だする。
「んじゃ、父さんが食ってくるぞよ」
「はああ?」
「だってもったいないだろ」
「は? おい、ちょ、親父? やめ……」
「親父、それは俺の椅子だ」
「んぐんぐ(はいはい)」
親父は立ち上がってチェアをあけた。俺はすぐさまどすんと腰かける。
親父は棒を握ってうずまきドーナツをかじっていた。今日の夜食にと秘書宮下が買っておいたものだろう。かんぴょう入りプレーン生地にピスタチオチョコ、シナモンパウダー。毎日食べていると見た目でドーナツの種類がわかるようになる。つぶの大きさと色からして煮りんごではなくかんぴょう煮、同じ緑でも薄めのグリーンはピスタチオだ。
親父はすごくうまそうに食べている。俺が食うはずだったドーナツを。くそ。いや、俺はドーナツが食べたかったんじゃない。ただ腹が減っているだけだ。なんでもいいから腹に入れたい。それを俺の目の前で。しかも満足げに。くそ親父め。
ごくり、と喉をならして親父は飲み込んだ。恨めしくて、にらむ。そんな俺に気づいた親父はきょとんとした。
「あれ? お前、予約したんじゃなかったのか、鉄板焼き」
「ああ」
「当日でしかも予約時間を過ぎてたのではキャンセルもできないだろうに。代金は戻らんぞよ」
「そんなはした金、どうでもいい。たかだか30万だ」
「待ち人来たらずか? 丈浩もフラれることがあるのか」
「うるさい。待ち合わせの女は来たんだがな、ちょっと手違いがあって一緒に食うのをやめた」
「ふうん。やめたねぇ。じゃあひとりで飯をくってるのか、彼女」
「たぶんな」
「まったく。丈浩をそんな男に育ては覚えはないぞよ。女に恥をかかすとは……亡くなった母さんも嘆いてるぞよぉ」
親父は伏し目がちに、ため息をついた。そして手の甲で口角に着いた粉糖をぬぐう。一瞬ぴたりと動きを止めて、俺を見、にやりと笑った。こういうときの親父は何を考えているか察しがつかん。不気味だ。嫌な予感だする。
「んじゃ、父さんが食ってくるぞよ」
「はああ?」
「だってもったいないだろ」
「は? おい、ちょ、親父? やめ……」