俺様社長と付箋紙文通?!
俺が立ち上がるが早いか、ドアが閉まるのが早いか、親父は社長室から出て行った。しかもスキップで。
追いかけてドアノブに
手をかけたが、瞬間、やめた。引き留めにいってどうする。変に意識しているみたいではないか。あんな雑魚娘に。おさげ髪にはれぼったい目、前髪ぱっつんの田舎くさい……。
ん? あれ。そういえばさっき、いつもと違った記憶がある。編んだ髪は解かれて下され、上半分を緩くまとめていた。前髪はふんわりとカールしていて、目は……二重だった。濃い目のアイシャドーのせいかぱっちりした瞳で、唇はつややかな赤。赤と言っても上品なバラの色だった。
白いワンピースは襟ぐりがあいていて、鎖骨には小さなダイヤのネックレス、フレアのスカートからは白くて細い足が伸びていた。別人のようだった。品のある、どこぞやの令嬢のような。
いや、待て。あの女学生モドキのどこが令嬢だというのだ。俺のことをあんたと呼び、無駄に背が高いだの、嫌みな奴だのほざきおって。ぷんすかぷんすか怒って、しまいには目に涙をためて泣きそうになりやがって。
泣きそう、か。泣いてるんだろうか、今頃。ひとりでカウンターで涙を流しながら食っていたら。亡くなった母親の遺言は「女の子を泣かせてはだめよ」だった。幼稚園で女の子を泣かせては母がいつも謝りにいっていた。
今から行こうか……いや、俺は何を考えているんだ。あの女学生モドキがひとり飯を食ってるからなんだというのだ、あんなガサツな娘が泣いてるはずもない。いやでも……。無意識に立ち上がる。一歩踏み出した。
待て。いま親父が向かったではないか。
何をいまさら。親父がいるなら放っておこう。余計に話をややこしくするだけだ。
*−*−*
カウンター内に白いコック帽を被った若いスタッフが来て、私に一礼した。あと10分待って来なかったらキャンセルして帰ることを伝えた。ひとりで食事してもつまらないし、私は食事のためにここに来たんじゃない。ただ、毎日ドーナツを食べてくれるひとに会えるなら、ひとめ見たい、と思ってやってきた。
どんなひとだろう。おじいちゃんみたいな白髭の年配のひとかな、それとも若い青年実業家なのかな、とか、どんなひとでもいい、会ってみたかった。
追いかけてドアノブに
手をかけたが、瞬間、やめた。引き留めにいってどうする。変に意識しているみたいではないか。あんな雑魚娘に。おさげ髪にはれぼったい目、前髪ぱっつんの田舎くさい……。
ん? あれ。そういえばさっき、いつもと違った記憶がある。編んだ髪は解かれて下され、上半分を緩くまとめていた。前髪はふんわりとカールしていて、目は……二重だった。濃い目のアイシャドーのせいかぱっちりした瞳で、唇はつややかな赤。赤と言っても上品なバラの色だった。
白いワンピースは襟ぐりがあいていて、鎖骨には小さなダイヤのネックレス、フレアのスカートからは白くて細い足が伸びていた。別人のようだった。品のある、どこぞやの令嬢のような。
いや、待て。あの女学生モドキのどこが令嬢だというのだ。俺のことをあんたと呼び、無駄に背が高いだの、嫌みな奴だのほざきおって。ぷんすかぷんすか怒って、しまいには目に涙をためて泣きそうになりやがって。
泣きそう、か。泣いてるんだろうか、今頃。ひとりでカウンターで涙を流しながら食っていたら。亡くなった母親の遺言は「女の子を泣かせてはだめよ」だった。幼稚園で女の子を泣かせては母がいつも謝りにいっていた。
今から行こうか……いや、俺は何を考えているんだ。あの女学生モドキがひとり飯を食ってるからなんだというのだ、あんなガサツな娘が泣いてるはずもない。いやでも……。無意識に立ち上がる。一歩踏み出した。
待て。いま親父が向かったではないか。
何をいまさら。親父がいるなら放っておこう。余計に話をややこしくするだけだ。
*−*−*
カウンター内に白いコック帽を被った若いスタッフが来て、私に一礼した。あと10分待って来なかったらキャンセルして帰ることを伝えた。ひとりで食事してもつまらないし、私は食事のためにここに来たんじゃない。ただ、毎日ドーナツを食べてくれるひとに会えるなら、ひとめ見たい、と思ってやってきた。
どんなひとだろう。おじいちゃんみたいな白髭の年配のひとかな、それとも若い青年実業家なのかな、とか、どんなひとでもいい、会ってみたかった。