俺様社長と付箋紙文通?!
そんな言葉がかけめぐり、男の指先はネックレスをひっかけたようだ。ぐいと前に引っ張られて前につんのめる。首裏に当たったチェーンが皮膚に食い込んだ。痛い……怖い……。誰か、誰か助けて! と声にならない声で訴えたその直後。


「なにするんだっ、貴様っ!」


うっ、という男のうめき声、と同時に。

ドン。

私は背中から地面に倒れ落ちた。首が、特に後頭部に熱い痛みが走る。それと同時に背中と腰がビリビリと痺れだした。視界には青いジグソーパズルが砂嵐のごとくチカチカとしだした。私は倒れて石畳に体を打ちつけたらしい。

くそっ、間に合わなかった、という声。どたどたという逃げる足音。視界にはビルの谷間に星が飛ぶ。そこに顔が現れた。


「おいっ、大丈夫かっ!」


鬼の形相をしたシャチョー。二重まぶたの濃い表情で私をにらんでいた。


「あ……あの……」
「大丈夫かって、聞いてるんだっ!」
「だ……大丈夫です」


怖いんですけど。


「起きられるか?」
「あのぅ、いったい何が」
「不審者がお前を狙った。正確にはダイヤかもしれん」


固かった背中に暖かいものが当てられた。直後、ぐいと押されて、起き上がる。景色は青空からエントランスパークの風景に変わる。いつもは立ち止まらない都会人が足を止めてこっちを見つめていた。アイメイクをしてないんだからあまり見つめないでほしい。

視界には再びシャチョーの顔になる。ギロリと再びにらみつけられて、正直、ひるんだ。


「痛みはあるか?」
「少し」
「頭も打っただろう。痛みは」
「頭は痛くないです。大丈夫……」
「立てるか?」


設楽シャチョーが私のわきの下に手を入れて支え、立たせようとした。その指先が胸のふくらみに当たっている。どさくさに紛れてなんてことを!


「エッ……いたたたた!」
「どうした?」
「足首が。足首が痛いです」
「捻挫でもしたか。医務室にいくぞ」


行くぞと言われても足が痛くていけないと思った瞬間。
ふわり。視界が青空のピースになる。ふわふわと揺れる体。

設楽シャチョーに抱き上げられていた。そのままビル玄関に吸い込まれていく。


「だ、大丈夫です。降ろしてください。あの、重たいですし」
「普段から鍛えている。このくらい平気だ」

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