俺様社長と付箋紙文通?!
スタッフが去ってひとりになる。途方に暮れてリビングのソファに腰かけた。ゆったりと沈み込む座面、肌ざわりのいい上質な革。ひじ掛けやテーブルの木目がオリエンタルな雰囲気を醸し出す。

なにも知らないんだな、私。そして教えてくれないんだな、ボスさん。

玄関からベルの音がした。向かうといたのは田中さんとテツ子さんだった。


「咲帆さん!」
「さきちゃん!」


ふたりとも心配そうな、そして驚いた顔をしていた。無事でよかった、と胸をなでおろすテツ子さん、申し訳ないと何度も謝る田中さん。大都会東京は薄情というイメージがあったが、全然そんなことはなかった。


「っていうか、プレジデンタルスイート?」
「そうみたい。付箋紙のひとが部屋をとってくれて」
「1泊200万円するっていう……入っていい?」



その夜はホテルの計らいで部屋に3人分の食事が用意された。ルームサービスだ。リビングに設置されたディナーテーブルの上には金の縁取りがなされた大ぶりの皿の上に一回り小さい皿が置かれ、その両脇には大小さまざまのフォークとナイフが並び、きらりと光る。カジュアルフレンチということらしいが、こんな仰々しいのは初めてだ。でもホテルの部屋ということもあり、また、気取らずに召し上がっていただきたい、と皿の手前には塗り箸も添えられていた。私もテツ子さんも田中さんも初めはカチコチに緊張していたが、サーブしてくれるボーイさんが優しくにっこりほほ笑んでくれたので次第にリラックスすることができた。
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