俺様社長と付箋紙文通?!
ようやく7階に到着して、光琳の前に立った。入口には長蛇の列ができていた。ざっと20人はいるだろう。圧倒されている俺をよそに、宮下は店内にずかずかと入っていく。店主と掛け合うためだ。そんな宮下を並んでる客たちは不審げに見る。並んでいる自分たちよりさきに店に消えた彼女をずるいと思っているのが空気でわかる。
しかし、俺はビルのオーナーだ。なんの文句がある。
行列の連中が俺をにらんだ。俺はこのビルを建てた。このビルがなければこの中華の店もなかったのだ。だから俺は先に飯を食う権利がある。庶民は並べ。
ポーンという電子音とともに再びエレベーターから人が出てくる。出てきたのは黒いTシャツとジーンズにベージュのエプロンをした女だった。長い髪をおさげにし、オンザ眉毛の短い前髪。服も地味だが顔も地味だ。田舎から飛び出てきた女学生のようだった。女学生がこのビルに何の用だ?
女学生モドキは光琳の列の最後尾に並んだ。ひとりのようだ。細長いチケットを大切そうにつまみ、一重まぶたの目でにやにやと眺めている。年のころは二十歳かそこらだ。TPOという常識を持ち合わせていない若者が都会のレストランで浮ついている。一流品に混じる規格外商品と同じだ。
ふん、と俺はしつけの意味合いも込めて女学生モドキに鼻を鳴らした。それが伝わったのか、彼女は俺のほうを向いた。一瞬目が合って、少しどきりとした。こいつ、どこかで見たことのある……。気のせいか。
*−*−*
文字盤がドーナツになっている腕時計で13時半になったことを確認し、ちょっと早い店じまいをした。石畳の円形広場から55階建てのビルを眺め、それから緊張気味でビルの中に入る。広々としたロビーは4階まで吹き抜けで開放感があり、ガラス張りの窓からは日が差し込み、冬を忘れてしまうほどのあたたかさだ。2階に続く長いエスカレーターの先には日本初上陸のシアトル系コーヒーショップKがある。行列しているのがここからも見えた。
しかし、俺はビルのオーナーだ。なんの文句がある。
行列の連中が俺をにらんだ。俺はこのビルを建てた。このビルがなければこの中華の店もなかったのだ。だから俺は先に飯を食う権利がある。庶民は並べ。
ポーンという電子音とともに再びエレベーターから人が出てくる。出てきたのは黒いTシャツとジーンズにベージュのエプロンをした女だった。長い髪をおさげにし、オンザ眉毛の短い前髪。服も地味だが顔も地味だ。田舎から飛び出てきた女学生のようだった。女学生がこのビルに何の用だ?
女学生モドキは光琳の列の最後尾に並んだ。ひとりのようだ。細長いチケットを大切そうにつまみ、一重まぶたの目でにやにやと眺めている。年のころは二十歳かそこらだ。TPOという常識を持ち合わせていない若者が都会のレストランで浮ついている。一流品に混じる規格外商品と同じだ。
ふん、と俺はしつけの意味合いも込めて女学生モドキに鼻を鳴らした。それが伝わったのか、彼女は俺のほうを向いた。一瞬目が合って、少しどきりとした。こいつ、どこかで見たことのある……。気のせいか。
*−*−*
文字盤がドーナツになっている腕時計で13時半になったことを確認し、ちょっと早い店じまいをした。石畳の円形広場から55階建てのビルを眺め、それから緊張気味でビルの中に入る。広々としたロビーは4階まで吹き抜けで開放感があり、ガラス張りの窓からは日が差し込み、冬を忘れてしまうほどのあたたかさだ。2階に続く長いエスカレーターの先には日本初上陸のシアトル系コーヒーショップKがある。行列しているのがここからも見えた。