俺様社長と付箋紙文通?!
声をかけてきたのはテツ子さんだった。心配そうに私を見て、昨日はたいへんだったね、ごちそうさま、と言った。ルームサービスを田中さんとテツ子さんと取ったけど、私がごちそうしたわけじゃない。ううん、と首を横に振って返事をした。
「なんか顔色さえないけど……ほんとうに大丈夫?」
「まあ、うん……。あのね」
「なに」
「設楽シャチョーが付箋紙のひとだった」
「ふうん」
テツ子さんはさもありなんでうなずいた。とくに驚きもせずに。
「あのコーヒーショップKでお客さんたちを立ち退かせた極悪非道のシャチョーが、だよ」
「うん」
「テツ子さんは見てないけど、四川中華光琳で割り込みしたずるいシャチョーがだよ」
「うん、聞いたよ」
「まるこぽーろでさんざんわたしを馬鹿にして笑って帰った冷徹男のシャチョーがだよ」
「そーだねー」
「ドタキャンしたお詫びにダイヤのネックレスを買ってくれたひとだよ」
「うん」
「私が強奪されそうになって助けてくれたひとがだよ」
「咲帆さんが強奪されそうになったんじゃなくてダイヤがでしょ」
「そんなことどうでもいいじゃない。なんでテツ子さんは冷静なの?」
「だって知ってたから」
「へ?」
私は目をまあるくした。驚いて二の句が継げない。そんな私をよそにテツ子さんはドーナツ代の500円玉を私の手のひらのちょんとおいた。そして持っていたドーナツを自分で紙袋に入れる。
「し、知ってたの?」
「うん。このビルに勤めてるひとはみんな知ってる。だって有名人だし。オーナーも秘書の女の人も。二人ともカリスマ的存在でしょ。背は高いし美男美女だし」
「どうして教えてくれなかったの?」
「だって、最初は分からなかったの。でも気づいたときには咲帆さんは設楽オーナーの悪口は言うし、でも付箋紙のひとには恋してたでしょ?」
「こ、恋?!」
私はまたフリーズした。恋。恋? 私が、恋?
「ほら。慌ててるってことは認めるってことでしょ」
「ち、ちが……う……」
「違わない。咲帆さんは設楽オーナーに惹かれてる。惹かれてるからこそ悪口も出るし、気にもなるの。人の恋路を邪魔するやつはなんとやらだからね、黙ってたの」
「そ、そんなこと」
「あ、噂をすればんとやらよ。ほら」
テツ子さんは視線でビルに自動ドアをさした。設楽シャチョーだ。長い足でずんずんとこっちに向かってくる。
「なんか顔色さえないけど……ほんとうに大丈夫?」
「まあ、うん……。あのね」
「なに」
「設楽シャチョーが付箋紙のひとだった」
「ふうん」
テツ子さんはさもありなんでうなずいた。とくに驚きもせずに。
「あのコーヒーショップKでお客さんたちを立ち退かせた極悪非道のシャチョーが、だよ」
「うん」
「テツ子さんは見てないけど、四川中華光琳で割り込みしたずるいシャチョーがだよ」
「うん、聞いたよ」
「まるこぽーろでさんざんわたしを馬鹿にして笑って帰った冷徹男のシャチョーがだよ」
「そーだねー」
「ドタキャンしたお詫びにダイヤのネックレスを買ってくれたひとだよ」
「うん」
「私が強奪されそうになって助けてくれたひとがだよ」
「咲帆さんが強奪されそうになったんじゃなくてダイヤがでしょ」
「そんなことどうでもいいじゃない。なんでテツ子さんは冷静なの?」
「だって知ってたから」
「へ?」
私は目をまあるくした。驚いて二の句が継げない。そんな私をよそにテツ子さんはドーナツ代の500円玉を私の手のひらのちょんとおいた。そして持っていたドーナツを自分で紙袋に入れる。
「し、知ってたの?」
「うん。このビルに勤めてるひとはみんな知ってる。だって有名人だし。オーナーも秘書の女の人も。二人ともカリスマ的存在でしょ。背は高いし美男美女だし」
「どうして教えてくれなかったの?」
「だって、最初は分からなかったの。でも気づいたときには咲帆さんは設楽オーナーの悪口は言うし、でも付箋紙のひとには恋してたでしょ?」
「こ、恋?!」
私はまたフリーズした。恋。恋? 私が、恋?
「ほら。慌ててるってことは認めるってことでしょ」
「ち、ちが……う……」
「違わない。咲帆さんは設楽オーナーに惹かれてる。惹かれてるからこそ悪口も出るし、気にもなるの。人の恋路を邪魔するやつはなんとやらだからね、黙ってたの」
「そ、そんなこと」
「あ、噂をすればんとやらよ。ほら」
テツ子さんは視線でビルに自動ドアをさした。設楽シャチョーだ。長い足でずんずんとこっちに向かってくる。