俺様社長と付箋紙文通?!
「じゃあ、がんばってね!」
「や、だめ、ひとりにしないでっ! ちょっとテツ子さーん!」


テツ子さんはにんまり笑うと手をひらひらとさせて行ってしまった。恋、私があのひとに恋……。ダメだ。頭の中が真っ白になる。

来ないで来ないで、来ないでぇ〜っ!、と願うのに設楽シャチョーはその長い足でずんずんと向かってくる。眉間にしわを寄せて今日はいつも以上に気難しそうだ。私の心臓がどきんどきんと大きな音を立てる。

私がこのひとを好き……?
ああ、好きなんだ、もう認めてしまえ。好き。

そう認めた瞬間、私の顔はほてりだした。何を話そう。とりあえず何も気づかなかったふりをしよう。目の前にいるお客さんから500円玉を受け取り、ありがとうございますぅ、と言う。平常心、平常心と心の中で唱える。



*−*−*

心なしか、サキホの顔が赤い。まさか熱でもあるのではないか。昨日頭を打った拍子に風邪でも引いたのだろうか。心配だ。今すぐ抱きしめて部屋に連れ込みたい。ベッドで休ませたい。そしてその体を……何を考えているのだ、俺は。


「もう大丈夫なのか?」
「は……はい。おかげさまで。き、昨日はありがとうございました、あのヘリで搬送してもらって検査もつきあってくれて……」


サキホはうつむいたままで話す。どうして俺の顔を見ようとしないのだろう。その小さなあごをつまみ、上を向かせたい。手を伸ばしかけて俺はスーツのポケットに手を突っ込んだ。


「ああ、いや。気にすることはない。このエントランスパークで起きた事故だ。この事故の責任はオーナーである俺にある。それより本当に大丈夫か。足もくじいていただろう?」
「だ……大丈夫」
「本当に大丈夫か? あんなに腫れていたろう」


俺はそう言ってサキホの前にひざまずいた。白いタイツの両足は赤のムートンブーツに収められていた。昨日ハンドボールぐらいに脹れていた足首を見ることはできない。

手を伸ばす……と、上から茶々が入れられた。見上げればウォールが笑っていた。


「タケちゃん、エロいよ」
「馬鹿か。腫れがひいたか確認するだけだ」
「僕のハニーに触んないでよ。ぐひひ」


俺は立ち上がった。ハニー?、ハニーだとお?
正面のサキホに視線を戻す。


「お前はこの男のハニーなのか?」
「ハ、ニー?」
「お前はウォールとつきあっているのかときいてるんだ!」
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