俺様社長と付箋紙文通?!
「私のほうが忙しいんです。よろしくお願いします」
「なら親父が」
「俺はヘリのお手入れで忙しいの」


どいつもこいつも。ふん、と鼻を鳴らして俺は立ち上がった。仕方あるまい、自分で買いに行こう。仕方がないからだ! 


「設楽社長」
「なんだ」
「あの娘の話ではないのですが関連のあることです」
「なんだ!」
「あのドーナツの原材料が地元とちぎ産の食材を扱っているのはご存知かと思いますが、その小麦粉の生産地が開発を進めているショッピングタウンの場所とかぶっています」
「なんだと?」
「このまま開発を進めるとドーナツが作れなくなる可能性があります」



*−*−*

あの事件から1週間が経った。足首の捻挫もとうによくなっていて、数日前からひとりでとちぎから来て、ひとりで販売している。ウォール社長も私だけに構ってはいられない。あったか☆ドーナツの存在危機にあちこち奔走しているらしい。原因は小麦粉だ。小麦粉の生産者から直に納入打ち切りを言い渡された。アメリカ帰りのウォール社長にはとちぎ産小麦は相当良質で、ドーナツをつくるにはこの小麦じゃないと嫌だと駄々をこねている。どうにか畑を続けてもらえないかといまだ交渉を続けているようだ。その一方で、ほかの産地も探しているらしい。県の北部でも小麦は栽培されているし、お隣ぐんま県でも二毛作は盛んで、麦は生産されている。試供品を取り寄せてはドーナツを試作している。

どうなっちゃうんだろうな、あったか☆ドーナツ。

心なしか、クリスマスソングのBGMが大きくなった気がした。クリスマスはもうそこまでやってきている。

私にできることと言ったら、ドーナツを売ることだけだ。ドーナツを楽しみにしているお客さんのために毎日がんばるだけだ。設楽シャチョーも楽しみにしてる。毎日こうしてドーナツを売れば、そのドーナツが設楽シャチョーの喜びにつながるんだし。

……と自分を納得させてドーナツを販売していると、設楽シャチョーがやってきた。私の心臓が跳ねる。素直にうれしいと思う自分とどう接していいかわからなくて困る自分がいる。


「ドーナツをくれ」
「な、ならんでください」
「……そうか」

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