俺様社長と付箋紙文通?!
冷めた野菜炒めを温めるのも面倒でそのまま食べる。シャワーを浴びて寝室に行く。古い天蓋付きのベッド、このベッドにサキホは寝ていたのか。
サキホがここに来てくれたら。でも無理だろう。この実家を奪ったうえ、今度は小麦畑だ。人の持つ不動産を右から左に流すのはデベロッパーの仕事で、それに伴う人の生活を変えてしまうのは宿命だ。
恨んでいるだろうか。この天蓋がお気に入りで、泣く泣く引っ越した少女。ここを買い取った俺と親父を恨んでいるだろうか。「この洋館は横流しない」、「寝室のベッドは解体しない」、という条件をのんで引き取った。いつかここを買い取りに来るかから、そのときまでそのまま保存していてほしい、と。
それがサキホだとは。運命と思わざるを得ない。
でも結ばれないのも運命だろう。
零細企業を握りつぶすようにのっとった俺を、小麦畑をつぶす俺を、許してはくれないだろう。
俺は目を閉じて、もう会うのはやめよう、と心に誓った。
忘れるんだ。
*−*−*
あれから3日が過ぎた。バリキャリ女史は来るけど設楽シャチョーは来なくなった。会って、付箋紙のボスさんですよね、と確認もしたいのに。きょうも彼女がドーナツを買いに来たということは彼は来ないということだ。
「いらっしゃいませぇ」
「まったくのんきね」
手渡されたカードを開くと付箋紙も貼られていなかった。私は気づかれないようため息をついた。
「きょうも付箋紙がないですね」
「なにも言われなかったけど。あなたが適当に選んで」
「はぁい」
このところ付箋紙も貼られていない。年末で忙しくなったのか。ちょっとさみしく思いながら私は新作のアメリカンドッグを差し出した。もちろん普通のアメリカンドッグではない。中の芯は魚肉ソーセージだが、その周りを細長いドーナツ生地で巻いてある、トルネードな形だ。しかも長さは25センチ、通常の倍はある。さすがのバリキャリ女史も目を剥いた。
「アメリカンドッグです。どうでしょう?」
「そう。甘いものよりは血糖値が抑えられそうでいいわ」
特注の細長い紙袋に入れてモールで巻く。私はペンを手にしてすぐにそれを元にもどした。ボスさんからの付箋紙がないのに、私が返事を書くのも変だし。
「あのぅ。ボスさん元気ですか?」
「ええ元気よ。今日もとちぎに視察にいってるわ」
「そうですか……」
サキホがここに来てくれたら。でも無理だろう。この実家を奪ったうえ、今度は小麦畑だ。人の持つ不動産を右から左に流すのはデベロッパーの仕事で、それに伴う人の生活を変えてしまうのは宿命だ。
恨んでいるだろうか。この天蓋がお気に入りで、泣く泣く引っ越した少女。ここを買い取った俺と親父を恨んでいるだろうか。「この洋館は横流しない」、「寝室のベッドは解体しない」、という条件をのんで引き取った。いつかここを買い取りに来るかから、そのときまでそのまま保存していてほしい、と。
それがサキホだとは。運命と思わざるを得ない。
でも結ばれないのも運命だろう。
零細企業を握りつぶすようにのっとった俺を、小麦畑をつぶす俺を、許してはくれないだろう。
俺は目を閉じて、もう会うのはやめよう、と心に誓った。
忘れるんだ。
*−*−*
あれから3日が過ぎた。バリキャリ女史は来るけど設楽シャチョーは来なくなった。会って、付箋紙のボスさんですよね、と確認もしたいのに。きょうも彼女がドーナツを買いに来たということは彼は来ないということだ。
「いらっしゃいませぇ」
「まったくのんきね」
手渡されたカードを開くと付箋紙も貼られていなかった。私は気づかれないようため息をついた。
「きょうも付箋紙がないですね」
「なにも言われなかったけど。あなたが適当に選んで」
「はぁい」
このところ付箋紙も貼られていない。年末で忙しくなったのか。ちょっとさみしく思いながら私は新作のアメリカンドッグを差し出した。もちろん普通のアメリカンドッグではない。中の芯は魚肉ソーセージだが、その周りを細長いドーナツ生地で巻いてある、トルネードな形だ。しかも長さは25センチ、通常の倍はある。さすがのバリキャリ女史も目を剥いた。
「アメリカンドッグです。どうでしょう?」
「そう。甘いものよりは血糖値が抑えられそうでいいわ」
特注の細長い紙袋に入れてモールで巻く。私はペンを手にしてすぐにそれを元にもどした。ボスさんからの付箋紙がないのに、私が返事を書くのも変だし。
「あのぅ。ボスさん元気ですか?」
「ええ元気よ。今日もとちぎに視察にいってるわ」
「そうですか……」