俺様社長と付箋紙文通?!


「じゃあ、しっかり考えてよ」
「はい。ありがとうございましたぁ」


しかし、今度のお題はレベルが高そうだ。B.C. square TOKYOをイメージしたドーナツだなんて。ビルを見上げる。55階建てのおっきなビル、ヘリコプターがバラバラと飛んでいく。台に並べられたドーナツをぐるりと眺める。チョコと粉糖がかかった甘々系、フルーツの酸味が際立つ柑橘系、ビターなチョコ系もB.C. square TOKYOのイメージではない。すっきりとした精悍なビルだからさっぱり系? でも中にはたくさんの会社がひしめき合っていて、その中ではバリキャリさんもビジネスマンもいるし、おいしいご飯を求めてレストランには行列ができている。あまりにもばらついていて、イメージできない。

でも。設楽シャチョーが喜んでくれるなら頑張ろう。



*−*−*

クリスマスまであと数日だ。俺の手元にはドーナツの紙袋とドーナツカード、そして一枚の紙が添えられている。


“ドーナツ短冊です。願いごとを書いてツリーにぶら下げてください。ボスさんの願い事が叶いますように”


カードに挟まれた付箋紙にはそう書かれていた。丸い紙の表にはドーナツのイラストが、裏には罫線が印刷されている。七夕になぞらえて笹ならぬツリーにぶら下げろというのか。

なんと書けばいいのか。開発事業がうまくいきますように? これからもドーナツが食えますように? 相反する内容ではないか。開発かドーナツか。仕事かサキホか。二者択一だ。

なぬ。この俺が仕事とサキホを天秤にかけているというのか?
いや、この前の事件の負い目を感じているだけだ。そしてドーナツが食いたいだけだ。

まもなく、社長室のドアがノックされた。そのノックの音に秘書の宮下でないことは察知した。トントンのあとにツツツー、トトントン、とリズムが刻まれていたからだ。おまけに合間にはハーモニカの音色が聞こえる。俺はデスクにあるボタンを押してロックを解除すると現れたのは紅白横じまTシャツの男だ。

入るときにもハーモニカを鳴らし、にやにやと笑っている。悪友ウォーリーめ。


「元気そうじゃあん?」
「ウォーリーもな」
「咲帆のほんとの実家、お前んちだって言ったけどさぁ」
「ああ。引き渡しの日には俺も立ち会った記憶がある」
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