俺様社長と付箋紙文通?!
「にっちもさっちもいかなくなった不動産屋を二束三文で買い取るなんて、設楽一族って怖いね」
「人助けと言え」
「お前の親父も結構きわどい橋を渡ってきたじゃんか。そこに絡んで逆恨みしてる男がいるらしいんだわ」
「それは商売だ、仕方あるまい」
「でもそれが咲帆に関係していたら?」


なぬ? 俺は気づくとウォールの胸ぐらをつかんでいた。



*−*−*

今日のエントランスパークもにぎにぎしい……というよりものものしい。青い作業着を着た警備員が10人、耳にインカムを装着した私服警備員も10人いる。いつのまにか監視カメラも20台に増設されていた。この物々しい警備体制はなんなんだ。その中に管理人室の田中さんも混じって監視カメラの調整をしているらしい。


「あのぅ」
「済まないねぇ、さきちゃん。上からの命令でね、ちょっと厳戒態勢をしくことになってね」
「はぁ」
「僕は戻るけど、安心して販売してねぇ」


はい、と返事をしたものの、この状況では。でもそれを知らないお客さんはひっきりなしだ。私は笑顔で販売を開始する。

きょうは常連さんもびっくりしていることがある。ドーナツを陳列する平台に新商品が並んだからだ。直径50センチの超大型うずまきドーナツだ。生地はプレーンとチョコがしましまに渦を巻き、その上にはいちごチョコとピスタチオチョコが波状にかかり、その上からはアザランが散りばめられている。クリスマスっぽく緑と赤のシリコンペーパーの上に乗せられている。

その名もB.C. square TOKYO限定BIGりドーナツ。とにかく大きくて、とにかくいろんなものが入っている。重量から計算すると約30個分。価格は1個1万5000円。そうそう売れるものではないから、今日はお試しでディスプレイしているだけだ。

みんな面白そうに眺めていく。これ上司に頼んでみようか、とか、経費で落ちるかな、とか話している。意外と好感触だ。


「これください」
「はい?」
「さっき上司が通りがかりに見かけたらしくて。買ってこいって頼まれたんです」
「あ、ありがとうございます」

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