俺様社長と付箋紙文通?!
話題のビル前広場で販売できた記念に限定品をという声を聴いたのがきっかけに、B.C. square TOKYOをイメージして大きく、このビルには沢山の夢が詰まっていることから具もバラエティにした、と。いかにも自分で発案したかのようにしゃべるけど、それは全部私の案だ。別にいいけど。


「ではさっそくいただきたいと思います。うわっ、重たいですね。この辺をちぎって。手でそのまま食べられるのも魅力ですね。これならご家庭やオフィスでもシェアしやすいです。いただきます……ああ、おいしい。このおいしさの秘密はなんですか」
「材料のほとんどをとちぎ産のもので作っています。とくにこの小麦粉です。もっちりとした食感、さっくりとした食感が両方再現できるのはこのとちぎ産の小麦だけなんです」
「そんな真壁社長からテレビの前の皆さんにお願いがあるそうですが」
「この小麦の栽培をしている地区で開発事業が進められています。どうかこの小麦を、ドーナツを作り続けるためにみなさんのお力を貸していただけないでしょーかっ!」


ふぉーん、とウォール社長はハーモニカをふかしながらタップダンスでおどけて見せる。はぁいカットぉ、という声が上がると同時にウォール社長はリポーターのお姉さんを口説き始めた。あったか☆ドーナツ存続にどこまで本気なんだろうかと疑ってしまう。このままウォール社長に任せたままではいけない。直接、設楽シャチョーに掛け合おう。


「ウォール社長」
「なに?(ふぉーん)」
「お店番、お願いします」
「え、え、ちょっと咲帆?」


おそらく抗議の声であろう、ふぉーんというハーモニカの音色をバックに、私はビルの自動ドアに駆け出した。奥のエレベーターホール、アッパーフロア受付階のエレベーターに乗り込んだ。



*−*−*

西の窓から差し込む夕日がまぶしい。
開発に横やりが入った。このドーナツの材料となっているとちぎの麦畑で異変が起きている。ドーナツカーの取材を見た視聴者が、具体的に言えば大手の製菓会社や食品会社がこぞって視察に来ているという。異変は畑に限ったことではない。ネット上でもいろんな意見が飛び交っている。
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