俺様社長と付箋紙文通?!
わが設楽土地活用コンサルティングサービスにも問い合わせが日に数件ある。きょうもメールが5件、電話が12件あったと宮下から報告を受けたばかりだ。不動産王と呼ばれる親父もこの件数は多いと感じているようだ。


「親父、今夜空いてるか?」
「俺とデートか?」
「冗談も休み休み言え。ショッピングタウンとちぎの視察に行きたいんだが、ヘリを出してくれないか」
「テンダーロイン200グラム」
「ああ、わかった」
「それとガーリックライス」
「ああ」
「それと生ビール」
「ああ!」
「それから……」
「いいから連れていけっ! 宮下、ちょっと出てくる」


宮下が一礼する横をすり抜け、社長室を出た。階段をあがり屋上のヘリポートに向かう。オレンジ色の空にコバルトグリーンの機体はよく映えた。親父とヘリに乗り込む。バラバラバラと羽が唸る。



*−*−*

27階でエレベーターを降りると、目の前にはアッパー階専用受付カウンター、両脇に改札機と同じゲートが並んでいる。そのゲートの向こうにアッパー階専用のエレベーターホールがある。どうやらここで受付をしないとアッパーには入れないようだ。順番待ちをし、設楽土地開発コンサルティングサービスの名を告げると、受付のきれいなお姉さんはインターフォンで取り次いでくれた。来館者用のIDカードをもらってゲートを抜け、エレベーターに乗り込んだ。かかとに重量を感じて到着を待つ。扉が開くとオフホワイトの壁に金色の看板が掲示されている。設楽土地活用コンサルタントサービス。そこにバリキャリ女史が現れた。


「バリキャリさん! あの、設楽シャチョーは」


彼女は長い髪を振り、顎で向こうを指した。


「屋上のヘリポートにいるわよ」
「ヘリポート?」
「直通エレベーターはむこうだから」



*−*−*

親父が操縦席シートの左わきにあるサイクリックレバーを握る。これはエンジンの出力を操作するレバーだ。浮上しようとした瞬間、視界に何か動くものがあった。人だ。


「親父、止めろ! 止めてくれ!」
「なにぞや?」
「人がいる」


親父はレバーから手を離し、機体は再び屋上に足をつけた。俺はドアを開け、そこにいる人間を見下ろした。


「なにをしているんだ! 危ないだろうっ!」

< 73 / 87 >

この作品をシェア

pagetop