俺様社長と付箋紙文通?!
「実家は東京の西のはずれなんです。広い土地に洋館があって、そこに住んでいたんです。裏山もあって自然が豊富で。両親が不動産会社を営んでいたんですけど、不況のあおりで倒産して。うちが持っていた物件と自宅の洋館を二束三文で買い取られたって。あのお屋敷が好きだったからすごく悲しかった。毎晩泣きました」
「そうか……」
俺の腕の中にいるサキホから鼻をすする声が聞こえた。泣いているのか? それを確かめたいが、俺は怖くて窓を見た。その洋館に俺は住んでいて、その屋敷にサキホを招いてやりたい。サキホが気に入っていた裏山も天蓋ベッドもそのままにしてあるのだ、と。昼は一緒に散歩道を歩き、夕方には庭で石窯ピザを焼き、夜はベッドで眠りたい。サキホなら叔母も喜んで迎え入れてくれることだろう。抱きしめてやりたい、抱きしめてこのまま自宅に帰りたい。このままサキホを……。
いや待て。サキホから洋館を奪ったのは俺だ。正確には親父だが、親父は自分の不動産会社をより大きくするために東京の土地という土地を買い占めた。バブル崩壊後の土地の価値は急落して安かった。親父はぱっと見はお気楽社長だが、仕事となると厳しい。若い頃は特に、だ。そんな親父が容赦なく買い叩いたのだから、泣いた地主もたくさんいたはずだ。
それをサキホにカミングしたら、どうなる。自分の恨みつらみの相手が俺だと知ったら、俺を嫌うだろう。サキホとの唯一、つながっていられる手段であるドーナツも食べられなくなる。
サキホと結ばれない運命になるのなら、せめて、ドーナツを、ドーナツだけでも残したい。
どうして俺はここまでサキホにこだわるのか。そうか、俺はこの女が好きなのか。愛しているのか。
ヘリコプターはいつの間にか北関東の渡良瀬遊水地の湖上を飛んでいた。暮れかかった空を映すそれはハート型をしている。1周は10キロというから相当な大きさだ。でも空から見ればちっぽけだ。
「まだ怖いか?」
「いえ。だいぶ慣れました。あんまり揺れないんですね」
「ああ。下を見るといい。遊水地が見える」
「遊水地? もう渡良瀬遊水地まで来たんですか?」
「見てみるといい」
「でも」
「大丈夫だ。俺が支えている」
「そうか……」
俺の腕の中にいるサキホから鼻をすする声が聞こえた。泣いているのか? それを確かめたいが、俺は怖くて窓を見た。その洋館に俺は住んでいて、その屋敷にサキホを招いてやりたい。サキホが気に入っていた裏山も天蓋ベッドもそのままにしてあるのだ、と。昼は一緒に散歩道を歩き、夕方には庭で石窯ピザを焼き、夜はベッドで眠りたい。サキホなら叔母も喜んで迎え入れてくれることだろう。抱きしめてやりたい、抱きしめてこのまま自宅に帰りたい。このままサキホを……。
いや待て。サキホから洋館を奪ったのは俺だ。正確には親父だが、親父は自分の不動産会社をより大きくするために東京の土地という土地を買い占めた。バブル崩壊後の土地の価値は急落して安かった。親父はぱっと見はお気楽社長だが、仕事となると厳しい。若い頃は特に、だ。そんな親父が容赦なく買い叩いたのだから、泣いた地主もたくさんいたはずだ。
それをサキホにカミングしたら、どうなる。自分の恨みつらみの相手が俺だと知ったら、俺を嫌うだろう。サキホとの唯一、つながっていられる手段であるドーナツも食べられなくなる。
サキホと結ばれない運命になるのなら、せめて、ドーナツを、ドーナツだけでも残したい。
どうして俺はここまでサキホにこだわるのか。そうか、俺はこの女が好きなのか。愛しているのか。
ヘリコプターはいつの間にか北関東の渡良瀬遊水地の湖上を飛んでいた。暮れかかった空を映すそれはハート型をしている。1周は10キロというから相当な大きさだ。でも空から見ればちっぽけだ。
「まだ怖いか?」
「いえ。だいぶ慣れました。あんまり揺れないんですね」
「ああ。下を見るといい。遊水地が見える」
「遊水地? もう渡良瀬遊水地まで来たんですか?」
「見てみるといい」
「でも」
「大丈夫だ。俺が支えている」